2015 Fiscal Year Research-status Report
単一分子接合のスイッチング機構および熱起電力発生・熱生成と散逸の理論
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25390007
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
上羽 弘 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 名誉教授 (70019214)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 走査トンネル顕微鏡 / 単一分子 / スイッチング素子 / 振動励起 / トンネル効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に沿って電極に挟まれた単一分子のスイッチング機構の理論的解明を行った。 具体的にはCu(110)表面に吸着したフェニル分子に走査トンネル顕微鏡の探針を近づけたり遠ざけたりすることで高低コンダクタンス状態が可逆的に発言する実験結果を探針と分子の間に働く力のその距離間依存性を第一原理計算によって求め、スイッチング現象の発言を説明した。 上記の課題に関連して、単一分子の非弾性トンネル電子(単一分子の振動励起)によって引き起こされる運動や反応(これらの現象は高低電流が科学的に観測されるスイッチング現象として観測される)の電圧依存性(これをアクションスペクトルと命名)の一般的な解析理論を確立するとともに、その具体的な実験手法と合わせ、単一分子のアクションスペクトルの理論をいくつかの系に適用解析した総合解説論文を世界で最初に国際専門誌に発表した。 なお、上記のフェニル分子のスイッチング現象の実験と理論の研究成果の一部は第15回”表面振動”国際会議(スペイン、サンセバスチアンで2016年、6月22-26日開催)で口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
主要研究課題の一つである単一分子のスイッチング機能の発現については当初の予想以上の成果があげられ、その研究目的を十二分に達したと考えられる。 また、単一分子の振動励起によっておこる様々な運動や反応の実験結果を統一的に理解する理論の構築と具体的解析は本研究課題の申請者である上羽がこの研究分野で世界をリードする形で行ってきたことは特筆に値すると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題のもう一つの単一分子の熱起電力発生・熱生成と散逸については、現在の段階で愚痴的成果は得られていない。研究期間を一年間延長し、この課題に全力を挙げる。具体的には温度の異なる走査顕微鏡の探針と金属基盤に吸着した単一分子にトンネル電流を流した時の分子内局在振動モードの励起(振動加熱)とその熱的散逸過程の理論構築を目指す。
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Causes of Carryover |
研究計画では単一分子の熱起電力発生と散逸の理論開発をスエーデンのLinnaeus大学のM. Paulssonと共同で行うため、彼の研究室を訪問予定であったが、私の健康上の理由と彼の都合で実現できなかったことにより、当初の研究最終年度(平成27年度)に余剰研究費が残った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究期間を平成28年度末まで一年間延長し、一か月程度スエーデンのLinnaeus大学に海外出張し、単一分子の熱起電力発生、熱の散逸などの研究課題を遂行する。
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Research Products
(6 results)