2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25390009
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
平野 元久 法政大学, 理工学部, 教授 (50362174)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 摩擦 / 超潤滑 / ナノトライボロジー / トライボロジー / 散逸機構 / 清浄表面 / 原子論 |
Outline of Annual Research Achievements |
タングステン面とシリコン面の原子スケール摩擦系において,摩擦転移の発生条件を解明した.タングステンとシリコンの現実系で摩擦転移を調べるために多体効果を考慮した高精度原子間ポテンシャルを作成した.具体的には,タングステンとシリコンの凝集エネルギー,平衡原子間距離,および配位数間の関係を活用し,タングステンとシリコン,シリコン同士,タングステン同士の原子間ポテンシャルパラメターを決定した.タングステンとシリコンの原子レベル摩擦系では, 摩擦領域と超潤滑領域が,すべり速度と表面間 相互作用力の大きさに依存して特徴的な領域に現れる.原子レベル摩擦系の動力学解析により,摩擦条件に強く依存して摩擦系のエネルギー散逸速度が大きく異なることを解明し,このエネルギー散逸機構を,周期倍分岐やカオスによって制御可能であることを示した.摩擦振動のスペクトル分析とポアンカレマップ分析により,摩擦振動のストレンジアトラクタ発現の可能性を示した. 実験研究では,探針・試料表面の近接でカンチレバーを共振し,探針走査時のカンチレバーの共振振動数変化から探針表面間の摩擦力測定を可能にする測定法を開発した.原子スケール摩擦では,清浄結晶表面間の格子整合性に依存して摩擦が増減することが理論予測される.原子スケール摩擦異方性の観測を実現するために,試料を圧電モータによって回転し摩擦力を測定することにより,摩擦力の表面格子ミスフィット依存性である原子スケール摩擦異方性の観測実験を実現した.透過電子顕微鏡内の非接触原子間力顕微鏡を組込むことにより,原子間力顕微鏡探針表面と試料表面の原子スケール摩擦の原子像観察を実現する実験方法を考案した.本研究の実施により,摩擦原子像観察と摩擦力測定を可能にする装置構成と,原子スケール摩擦異方性の直接観測の実現性を示した.
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