2014 Fiscal Year Research-status Report
非接触式試料保持によるナノ粒子1粒の時間分解X線回折
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25390012
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
福山 祥光 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 研究員 (20332249)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ナノ・マイクロ科学 / ナノ構造物性 / 微粒子トラップ |
Outline of Annual Research Achievements |
光トラップを用いた非接触式試料保持機構と放射光パルスを用いて、ナノ粒子1粒に対する時間分解X線回折法の開発を行っている。当該年度には、強度変調型光トラップの最適化、時間分解測定システムの開発、シングルビーム光トラップの開発を行った。 光トラップを用いた非接触式試料保持機構では、保持した試料ナノ粒子1粒のX線回折測定が可能である。一方、試料粒子は常に強いトラップ用レーザー光の照射を受け光励起された状態にあるので、光励起されていない状態の物性測定ができないという短所を持つ。この短所を克服するために、強度変調型光トラップの開発を行い、さらに時間分解測定を想定した変調周波数や変調強度の最適化を行った。強度変調型光トラップはトラップ用レーザー光に音響光学変調器を用いてアナログ強度変調をかけることにより実現した。また、この技術は放射光パルスと同期を取り時間分解X線回折測定を行うために必要不可欠な技術でもある。 放射光パルスに同期した基準信号を作り、強度変調型光トラップの変調周波数と同期させるシステムと遅延時間を正確に発生させるシステムを構築することによりナノ粒子1粒の時間分解X線回折測定を行う準備を整えた。 これまで開発してきた光トラップは対向型と呼ばれ2本のレーザー光をレンズで集光し対向させる配置であり、2本のレーザー光の光軸を正確に重ね合わせることが保持した試料粒子の安定性向上の鍵となる。時間的制約が厳しい放射光実験において、この正確なアライメントを実験ハッチ内で実現することは困難でありまた実験の効率を悪化させる原因であった。この困難を克服するために、実験ハッチ内でのアライメントが容易なシングルビーム光トラップの開発を行った。今後、シングルビーム光トラップを用いた非接触式試料保持ユニットを開発することにより、放射光実験の測定効率が大幅に改善することが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光トラップを用いた非接触式試料保持機構と放射光パルスを用いたナノ粒子1粒に対する時間分解X線回折法を開発し、ナノ粒子1粒に対する動的な構造研究を実践するためには、強度変調型光トラップの開発、時間分解測定システムの構築、が必要不可欠である。 当該年度までに、音響光学変調器を用いた強度変調型光トラップの開発とその最適化、放射光パルスに同期した時間分解測定システムの構築を行い、ナノ粒子1粒に対する動的な構造研究を実践するための準備が整った。また、2次元動画計測ソフトウェアを用い保持したナノ粒子の位置の安定性評価システムが構築できている。以上の通り当該年度までに予定していた研究はスケジュール通り進行していることが評価の理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度には、開発した強度変調型光トラップと放射光パルスに同期した時間分解測定システムを組み合わせて、酸化セリウムをはじめとする可視光・紫外光応答型のナノ粒子1粒に対する動的な構造研究を行う。これらのナノ粒子は触媒作用、酸素吸蔵作用、光ルミネッセンス作用を持つために重要な物質である。対象とする試料粒径は50~500nm。 また、保持したナノ粒子がトラップポテンシャルの底で振動する周波数から試料の分極率を決めるシステムを開発し、ナノ粒子に対する分極率と格子定数や密度の関係を明らかにする。 これまで用いてきた対向型光トラップはレーザー光ミスアライメントの許容誤差が極端に小さい。時間的制約が厳しい放射光実験において、この正確なアライメントを実験ハッチ内で実現することは困難でありまた実験の効率を悪化させる原因であった。現在、実験ハッチ内でのアライメントが容易なシングルビーム光トラップの開発を進めており、実験室レベルでは実現している。今年度は、従来の対向型光トラップによる時間分解実験と並行して、シングルビーム光トラップを小型化・ユニット化し、放射光実験の測定効率の大幅な改善をめざす。
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