2013 Fiscal Year Research-status Report
カーボンナノチューブプローブを用いた単一シリコンナノ粒子の電気伝導機構の解明
Project/Area Number |
25390015
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
安坂 幸師 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (50361316)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / カーボンナノチューブ / 透過電子顕微鏡法 / その場観察 |
Research Abstract |
単一のナノメートルサイズの粒子(ナノ粒子)において発現する特性は、ナノ粒子個々の構造と密接に関連する。従来のナノギャップ電極を用いたナノ粒子の特性評価では、特性を構造と同時に評価することが困難であり、これが特性解明のボトルネックとなっている。本研究では、カーボンナノチューブ(CNT)をナノプローブやヒータ、あるいは電極として用いた高分解能透過電子顕微鏡内マニピュレーションその場観察測定法を応用することにより、このボトルネックを解決し、原子レベルでの構造変化と、電流や電圧、光の同時その場観察測定の実施により、単一シリコンナノ粒子の電気伝導やエレクトロルミネッセンス、カーボンとの高温反応、電界電子放出などの特性や現象を構造と対応付けて定量的に明らかにすることを目的とする。本年度、CNTナノプローブヒータ電極を作製し、そのCNT表面に結晶Siナノ粒子を超高真空電子線蒸着法により作製する条件を確立した。透過電子顕微鏡内で、このCNTナノプローブヒータ電極へ通電すると、Siナノ粒子はCNTの外層と反応し、シリコンカーバイド(SiC)ナノ粒子へと変化することを見出した。さらに通電し続けると、SiCナノ粒子の表面は炭素原子層で覆われた。最終的に、炭素原子層に内包されたSiCナノ粒子は完全に消失し、CNT表面には中空球殻構造の多層カーボンナノカプセルが残った。ナノカプセルは、CNTの温度が2100 Kに到達するまでに生成され、ナノカプセルを構成する炭素原子層はSiCナノ粒子の表面に沿って概ね形成されることから、ナノカプセルの形成機構はバルクSiCの熱分解によるグラフェンの形成機構と同様であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究計画に沿って、CNTナノプローブヒータ電極の作製方法、および結晶Siナノ粒子の作製方法を確立し、さらに高分解能透過電子顕微鏡内ナノマニピュレーションその場観察測定法による評価技術を構築しつつある。さらに、本年度までに実施した研究過程において、CNTナノプローブヒータ電極の表面で、CNTへの通電によりSiナノ粒子とCNTの外層が反応してSiCナノ粒子へと変化する様子やカーボンナノカプセルが形成される様子をその場高分解能透過電子顕微鏡法により見出すなど新たな知見をも得ており、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策として、基本的に本研究計画に沿って実施する。具体的には、高分解能透過電子顕微鏡内ナノマニピュレーションその場観察測定法による、CNTプローブヒータの特性評価、Siナノ粒子の極微細構造と電気伝導特性の評価、Siナノ粒子からの発光測定とその特性評価、Siナノ粒子とCNTの反応過程の解明、Siナノ粒子を蒸着したCNTからの電界電子放出の特性評価などを順次推進していく予定である。ところで、本研究では、ナノ物質の構造観察とともに、光スペクトルの測定も同時に行っている。今後、研究を推進するにあたり、本手法において光スペクトルの定量的な強度測定が必要となり、分光システムの感度校正を検討する必要が生じた。今後、本手法において感度校正を行うためのシステムの設計や製作についても並行して推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では、ナノ物質の構造観察ともに、光学的情報を得るために光スペクトルの測定も同時に行っている。測定結果を解析したところ、今後、研究を推進するにあたり、本手法において光スペクトルの定量的な強度測定を必要とすることが判明し、このため分光システムの感度校正を検討する必要が生じた。感度校正の検討を行っていたが、今年度中にこの校正を実施するためのシステムを構築することが困難であり、次年度に継続することになった。このため、本手法において感度校正を実施するためのシステムの設計や製作の費用として、次年度使用額が生じた。 次年度使用額を、主に、上述のシステムの設計や製作の費用に使用する。その他の観察および測定は問題なく実施できており、研究は順調に進展しているため、今後の研究の推進には全く問題はない。
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Research Products
(7 results)