2014 Fiscal Year Research-status Report
強い相互作用を有する錯体/金クラスター複合材料の構築と触媒反応への応用
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25390017
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂本 雅典 京都大学, 化学研究所, 助教 (60419463)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 金属クラスター / ポルフィリン / 触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、配位子を改良することにより安定性に優れるπ接合金クラスターの合成に成功した。前年度の研究では金ナノ粒子に対してポルフィリンを平面的に配位させるためにアセチルチオ基を用いていたが、合成したナノ粒子が安定性に欠けるという問題点があった。そこで、ジスルフィド基を有する亜鉛ポルフィリン であるZnSC2P-SSを用いた金ナノ粒子の合成を行った。ZnSC2P-SSの存在下で金イオンを還元することによりZnSC2P-SSに保護された金ナノ粒子を合成し、GPCを用いて分離精製を行った。 電子顕微鏡、MALDI-TOF-MSおよびICP-AESを用いた解析の結果、得られたπ接合金クラスターはポルフィリンが立方体状に配位した立方体構造と二枚のポルフィリンが上下に配位したサンドイッチ状の構造の二種類が存在することが明らかになった。また、反応溶媒を変えることによりポルフィリンが4枚接合した4面体構造を合成することもできることが分かった。XPS測定の結果、ZnSC2P-SSを用いた場合、金クラスター上にZnSC2P-SSが安定なステイプル構造を形成して配位していることが明らかになった。π-金属界面に働く界面相互作用を調査するためにZnSC2P-SSに保護された金ナノ粒子の吸収スペクトル測定を行ったところ、金クラスターに平面配位することによりポルフィリンのSoret帯の吸光係数の減少と長波長シフトが観察された。 本研究を通じて、安定なπ接合金クラスターの合成に成功しただけではなく、ポルフィリンの枚数が異なる一連のπ接合金クラスターの合成に成功した。これらのπ接合金クラスターを用いて触媒活性の評価を行うことにより、触媒活性に関して新たな知見を得ることができると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、π接合金クラスターを合成し、π接合が金クラスターの触媒能に与える影響を明らかにすることにより、新たな触媒を創製することである。申請者は平成25年度中に、ポルフィリンと金クラスター間の距離の異なる一連のπ接合金クラスターの合成に成功していたが、π接合金クラスターの不安定性の問題により触媒活性の調査を十分に行うことができなかった。そこで、平成26年度はより安定性の高いπ接合金クラスターの合成を試みた。新たに合成した配位子であるZnSC2P-SSを用いることで、より安定なπ接合金クラスターの合成に成功すると同時に、従来までは合成できなかった構造を有するπ接合金クラスターの合成に成功した。 π接合金クラスターの触媒活性を評価するという当初の予定を考慮すると、触媒活性の評価という観点からは幾分か研究が遅れ気味だが、新たなπ接合金クラスターの創製という観点からは非常に重要な成果を上げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、新たに合成されたZnSC2P-SSに保護されたπ接合金クラスターを用い、ポルフィリン-金クラスター間の相互作用の解明とクラスターの触媒活性における相互作用の影響の評価を行う。また、π接合金クラスターの構造を完全に解明するため、π接合金クラスターの単結晶X線構造解析を行う。具体的には、ZnSC2P-SSに保護されたπ接合金クラスターをGPCにより精製した上で、低温での液-液拡散法によりπ接合金クラスターの単結晶の生成を目指す。得られた単結晶のX線結晶構造解析は、申請者の所属する化学研究所の単結晶X線構造解析装置を用いて行う。同時に、すでに合成されたπ接合金クラスターを用いてアルコールの酸化などクラスターの触媒活性におけるπ接合の効果の評価を行う予定である。
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