2014 Fiscal Year Research-status Report
微小サイズ有機半導体ナノ結晶の作製法確立とその薄膜化による有機薄膜太陽電池の創成
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25390026
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
増原 陽人 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (30375167)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ナノ結晶 / 再沈法 / サイズ制御 / 相溶性 / 粘度 / 比誘電率 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで再沈法では、これまで経験則のみで作製条件を決め、ナノ結晶を作製してきたため、未だサイズ等への影響因子やナノ結晶形成過程が完全に解明できていない。そこで、今後より定量的で迅速な再沈条件の確立を行う上で必須となる影響因子・ナノ結晶形成過程の解明を目指した。 本年度は、ナノ結晶化対象化合物として、フラーレンC60を用い、1. 良・貧溶媒同士の相溶性の検討、2. 昨年度行った良溶媒の粘度が結晶サイズに及ぼす影響に関して、溶媒種を増やし再検討を行った。これに加え、3. 貧溶媒粘度がナノ結晶サイズに及ぼす影響、4. 貧溶媒種が結晶系に及ぼす影響に関しての検討も行った。 良・貧溶媒の相溶性に関して、良溶媒にtrans-decahydronaphthalene、貧溶媒にacetonitrileを用いて検討を行った。この検討により、良・貧溶媒同士の相溶性が悪い場合には結晶同士の融着が顕著に確認できた。さらに良溶媒粘度の影響を検討した結果、0 ~ 5 mPa・sの低粘度領域に関して、結晶サイズに大きな影響を与えないことを確認した。今回選択した溶媒種の組み合わせでは、全て良溶媒を含まないfcc構造を有する球状の結晶が得られており、比較可能な系であることから、C60ナノ結晶はfcc構造を有する場合において、良溶媒粘度と結晶サイズに明確な相関はないことを明らかにした。また、貧溶媒の粘度は良溶媒の粘度に比べ結晶サイズに影響を及ぼしやすいことが確認できた。上記結果より、C60は用いる溶媒種の組み合わせによって結晶系を制御できる可能性が見出されたため、貧溶媒種が結晶系に及ぼす影響に関しても検討を行った。この検討により、貧溶媒の比誘電率が約21以下の場合にhexagonal構造を有し、21以上の場合においてfcc構造をとる傾向が確認できた。以上より、溶媒種がナノ結晶に及ぼす影響を新たに明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
再沈法におけるナノ結晶サイズ制御因子として、良・貧溶媒粘度、溶媒同士の相溶性の二項目、結晶系制御因子として、貧溶媒の比誘電率に関してそれぞれ検討を行った。これら因子に対し、特にサイズに影響を及ぼす因子は貧溶媒粘度と溶媒同士の相溶性であった。さらに良溶媒粘度に関して、前年度の結果と異なり、溶媒種を増やしての検討より低粘度領域では結晶サイズに大きな影響は与えないことが分かってきた。また、貧溶媒の粘度の影響を検討している中で、結晶系と溶媒特性に相関がみられたため、詳細な検討を行ったところ比誘電率が結晶系に大きく影響していることが確認できた。以上の結果より、ナノ結晶化対象化合物としてC60を用いた場合には、大きく分けてfcc構造とhexagonal構造のいずれかの構造が形成され、fcc構造の場合には50 ~ 100 nm程度のサイズ単分散な球状の微小結晶が形成され、hexagonal構造の場合には100 nmを超えるサイズで多様な形状を有する結晶が作製できることが明らかとなった。また、fcc構造を有する結晶は分散安定性に優れ、結晶成長の速度も遅いが、hexagonal構造を有する結晶では結晶成長速度が速く時間経過によって形状が変化しやすい傾向がみられた。以上がこれまで解明した内容である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、結晶系の検討において良溶媒にm-xyleneを用いていたものをo-、p-xyleneでも同様に検討し、分子構造の僅かな差が結晶系に与える影響を検討する。また、上記した結晶系の制御に関して活性化エネルギーの図を作成し、fcc構造とhexagonal構造でどちらがエネルギー的に安定であるかを検討し、なぜ、hexagonal構造では良溶媒を取り込んで結晶を形成するのかについても解明を進めていく。これらの検討を進めることで、結晶サイズ、形状等に影響している因子を分子の構造や物性等のより細かい観点からも解明を進めることができる。上記に加え、より詳細なナノ結晶サイズ制御のため、昨年度は検討を見送ったFlow 3D等を用いた溶媒の攪拌・混合過程のシミュレーションを実施し、種々の条件で得られる実際のナノ結晶サイズとシミュレーション結果を相互検討する。
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