2014 Fiscal Year Research-status Report
室温スピン注入を実現するInPベーススピントロニクス
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25390052
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
内富 直隆 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20313562)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 半導体スピントロ二クス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、InPベーススピントロ二クスデバイスを実現するために、プロトタイプとして、InP基板に格子整合する半導体薄膜であるAl0.48In0.52As, Ga0.47In0.53Asについて、ZnSnAs2薄膜とMn添加ZnSnAs2薄膜とのヘテロエピタキシャルを検討しInAlAs/ZnSnAs2:Mn構造の磁性量子井戸構造(MQW)の作製を試みた。 InP基板上に低温分子線エピタキシー法(MBE)によって成長したZnSnAs2緩衝層およびInAlAs層について、高分解能X線回折パターン(HR-XRD)によって結晶構造を調べた。このHR-XRDで現れたフリンジパターンはZnSnAs2薄膜に起因するもので、良好な結晶性と界面状態を示している。さらに、断面透過型電子顕微鏡(TEM)によってZnSnAs2/InP上に成長した260nm厚のInAlAs層について,電子ビームを<110>InP方向から入射した断面観察を行った。このTEM像からInAlAsはZnSnAs2緩衝層にエピタキシャル成長しているが、あわせて貫通転位も見られる。InP/ZnSnAs2ヘテロ界面近傍のTEM像から界面層は非常に急峻でありフラットネスも良好であることが確認できた。次に、InAlAs/ZnSnAs2/InAlAsQWとInAlAs/ZnSnAs2:Mn/InAlAsMQWのTEM像を調べた。InAlAs層は25nm、ZnSnAs2:Mn層のMn組成比は3%であり、InP基板側から4,6,9nmと膜厚を変えた。これらのTEM観察からMnAsなどの2次相は観測させず、良好なQWが実現されていることが確認できた。低温MBE成長でIII-V族半導体とII-IV-V2族半導体のヘテロエピタキシャル界面が良好に成長することを確認でき、ZnSnAs2:Mnからなる新たなエピタキシャル結晶工学技術の一端を構築できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ZnSnAs2:Mn薄膜をInPベーススピントロ二クスデバイスに適用するためには、基本構造となる量子井戸構造などの作製が必要である。InP基板上で格子整合して結晶成長できるIII-V族半導体のInGaAsやInAlAsと量子ナノ構造の作製を行った。分子線エピタキシーを用いて積層構造を作製する結晶成長条件については最適化されていないが、基本的な量子ナノ構造を作製できることを検証することができた。一方、ZnやSnがIII-V族半導体ではドーパントとなるために、伝導性に影響することが予想される。特にInGaAsはバンドギャップが小さく伝導性がp型になる傾向がある。一方、InAlAsはバンドギャップが大きいことからZnSnAs2とのヘテロ構造が安定であると考えられる。このような観点から、さらに結晶成長条件の最適化を検討する。このように研究の進捗はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の推進方向として、(1)ZnSnAs2:Mn薄膜の強磁性発現のメカニズムの解明、(2)InPベーススピントロ二クスデバイスへの展開を重点としている。強磁性半導体の発現メカニズムについては、蛍光X線ホログラムや電子線ホログラムを用いた局所構造に関する共同研究により解明を継続する。また、昨年から進めている3次元アトムプローブ法を用いた原子分布に関する研究については、引き続き解析を進めMnの局所分布などを明らかにし、Mnを含むZnSnAs2のコヒーレントクラスター磁性半導体の構造検証を進める。スピントロニクスデバイスへの応用については、スピン偏極注入を検証するために電極パターン形成などを行い、スピン注入実験を進めることを計画している。
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Causes of Carryover |
納品された物品の支払いが遅れている会計上の理由により次年度に繰り越されたもの。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に消耗品購入の一部として使用予定。
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