2015 Fiscal Year Annual Research Report
室温スピン注入を実現するInPベーススピントロニクス
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25390052
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
内富 直隆 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20313562)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 磁性半導体 / 多元化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、InP基板に格子整合して室温強磁性を示すII-IV-V2半導体であるZnSnAs2:Mn薄膜の結晶成長の研究を発展させ、スピントロ二クスデバイスへの展開を意図している。本年度は、ZnSnAs2:Mn薄膜のデバイス応用を実現するために必要な分子線エピタキシーの結晶成長技術の最適化と薄膜の膜厚依存性について結晶成長を行った。ZnSnAs2:Mn薄膜結晶の最適化には主に基板温度と原料フラックスを変化させ、その組成依存性や電気特性、磁気特性を調べた。基板温度は300-360℃の範囲で変化させて、組成分析を行った結果、低温側ではZnリッチな成膜条件となっており、340℃の基板温度で、Zn,Sn,Asが化学量論的な組成比であることが確認された。また、この条件でMnを添加するとSnが減少することも確認された。一方で、このようなZnSnAs2:Mn薄膜の特徴を明らかにし、室温強磁性の起源を探る研究も進めることができた。母体材料であるZnSnAs2薄膜について、これまでSpring-8を用いた蛍光X線ホログラフィーの測定を行い、ZnSnAs層のAs面が大きく揺らいでいることが明らかになり、このような構造がMn原子をドーピングした際にひずみの緩和に役立っている可能性を示した。これらの結果を発展させて、さらにZnSnAs2:Mn薄膜についても解析を進めている。さらに、3次元アトムプローブを用いた測定から、母体材料を構成するZn,Sn,Asについては均一な原子分布を観測することができたが、Mnについては不均一な原子分布になっていることが明らかになった。このような結果は、スピノーダル分解相と関連しており閃亜鉛鉱構造のMn-As構造がネットワークをつくり強磁性の起源に関わっている可能性を強く示唆している。今後の室温強磁性の起源の解明に大きく近づいたと考えている
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