2013 Fiscal Year Research-status Report
スリットコート法による分子配向界面自己形成機構の徹底解明:完全制御を目指して
Project/Area Number |
25390053
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
木村 宗弘 長岡技術科学大学, 工学部, 准教授 (20242456)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | プリンテッドエレクトロニクス / ネマティック液晶 / 液晶配向 / フレキシブルディスプレイ / UV重合 / 配向印刷 / アンカリングエネルギー / プレティルト角 |
Research Abstract |
スリットコート法による液晶分子配向界面の自己形成メカニズムを解明するために、これまで明らかになっていた「せん断流」による一軸配向性の追加検証に加え、液晶に添加したアクリレート系モノマーのUV照射によるラジカル重合反応で誘起されるプレティルト発現について実験を行った。照射エネルギーを高くすることを目的に365nmのLED光源を用いて重合を行った場合は、均一な水平配向が得られるもののプレティルト角は発現しなかった。これに対し、多数の輝線を含む高圧水銀ランプを用いた実験では、高いプレティルト角を発現させることに成功した。フィルターを挿入した実験により、特に365nmよりも短波長のUV照射が高プレティルト角発現に有効であることが確認された。更にUV照射エネルギーによりプレティルト角を制御出来ることを見出した。方位角アンカリングエネルギーは10-6~10-5 J/m2オーダーであり、試料作成後3か月経ってからの再測定においても値の変化は無かったことから、安定した配向界面形成がなされていると考えられる。UV照射強度を強くすると大きくなる傾向が確認できた。1wt%程度のモノマー添加では、塗工する液晶の弾性定数や誘電率への影響がないことも確認した。更に電気光学応答について、従来法であるラビング法で作製した液晶表示素子と比較し、遜色がないことも確認した。本手法によって100mm角のプラスティックフイルム基板上に液晶を塗工し、液晶表示素子を作製するデモンストレーションも行った。基板上に配向膜を塗布する必要がないことは特筆すべき特徴である。屈曲半径10mm程度の連続的な曲げ伸ばしを繰り返しても配向が壊れることは無い。TNモード及びECBモードのサンプルに加え、高分子安定化ブルー相液晶のフイルム型液晶表示素子の作製も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スリットコート法による液晶の一軸配向の均一化条件は凡そ見出すことが出来た。異なる種類のUV反応性モノマーを液晶に添加し、液晶界面配向層を形成することに成功しており、当初の予定通りに実験が進められている。特に、プレティルト角を発現させかつ制御する条件を見出すことが出来たのであるが、UV光2回照射や斜め照射ではなく、UV波長および照射エネルギーのみで制御可能である点は産業応用の点からも有益である。 界面アンカリングエネルギーの評価についても予定通り進められた。また、ポリマー層と液晶との間のインタラクションを準定量的に評価するための実験も遂行中である。ポリマー表面の観測については、SEMでは明瞭に観測を行うことが出来なかったが、AFM(ダイナミックモード)によって表面トポグラフィーの測定を行うことは出来たものの、UV照射条件やプレティルト角との相関を明らかにするまでには至らなかった(26年度に実施予定)。 液晶素子としての特性については、従来法のラビング法との比較実験を行い、特性に遜色がないことを確認した。また、本手法によって100mm角のプラスティックフイルム基板上に液晶を塗工し、液晶表示素子を作製するデモンストレーションも行うなど、予定通り遂行中である。屈曲半径10mm程度の連続的な曲げ伸ばしなども試行している。TNモード及びECBモードのサンプルに加え、高分子安定化ブルー相液晶のフイルム型液晶表示素子の作製も行うことが出来ている。
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Strategy for Future Research Activity |
極角アンカリングエネルギーおよび方位角アンカリングエネルギーは、光配向膜と同程度であるにも関わらず、良好な一様配向を得られている原因を探究するため、液中AFM装置を用いて、重合された高分子界面における分子配向及びトポグラフィーを解析する予定である。また、UV照射条件による配向制御の応用として、フォトマスクを介してUV照射を行い液晶配向のパターン化を行う予定である。さらに、液晶表示素子のフレキシブル化を目指し、従来からのサンドイッチ型ではなく、単一基板に液晶や保護膜を塗工するだけで作製できる液晶素子を試作する。 表示素子以外への展開として、有機薄膜太陽電池の作製技術への応用を試みる。電荷移動度の比較的高いスメクティック液晶をスリットコータを用いて基板上に塗工し、分子を配向させることによる電荷移動度向上の実現を図る。デバイス作製装置は昨年度までに準備されているため、BTBT等の液晶を入手し次第着手する。また、連携研究者(山田昇)のプロジェクト(太陽電池検査装置)で用いる大型のフイルム型液晶素子を行う。
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