2014 Fiscal Year Research-status Report
スリットコート法による分子配向界面自己形成機構の徹底解明:完全制御を目指して
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25390053
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
木村 宗弘 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20242456)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ネマティック液晶 / 液晶配向 / フレキシブルディスプレイ / 液中原子間力顕微鏡 / UV重合 / プレティルト角 / 配向印刷 / アンカリングエネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
基板に液晶をスリットコート後にUV照射することにより、初期形成されていた水平配向が垂直配向に転移する現象の解明を中心に研究を遂行した。仮説として、UV照射によるラジカル重合反応によって形成された高分子層が凹凸構造を形成したことによって垂直配向が形成するのではないかと考えた。この仮説を検証するために、高分子層と液晶層の境界について、原子間力顕微鏡(AFM)によって観測した。液晶層を除去せずにトポロジー解析を行う液中AFM法を用い、UV照射前後の境界面トポロジーを比較した。初めに、液中AFM法を用いれば液晶を除去せずとも高分子像が撮れることを確認した。1μm角測定スキャナを用いた像観測では、せん断流れによる分子配向異方性は撮像出来なかった。また、UV照射前後での液中AFM像にも有意な差は見られなかった。UV照射によるポリマーの表面エネルギーは減少することが確認出来ており、またUV照射によりプレティルト角が増加することも確認できたことから、ポリマー表面のトポロジーの変化が原因でプレティルト角が上昇するという仮説は正しくないと考えられる。 本手法の発展展開として、スリットコータでの液晶塗工時に発生する異方的せん断流を利用し、棒状ナノ粒子を整列する手法の基礎的実験を行った。実験に用いたナノ粒子の分散性が悪かったことが原因で、ナノ粒子の異方的配列は今のところ確認できていない。また、ストライプ状マスクを介してのUV照射によって、水平配向領域と水平配向領域をストライプ状に分割形成することについては計画通り成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スリットコーターで作製した配向層の水平配向・垂直配向各領域の極角および方位角アンカリングエネルギーは10 -4 (J/m2) オーダーであり、UV照射エネルギーへの依存性も確認した。ここまでは予定通りの進捗である。 反応性メソゲンを重合した後のトポロジー解析は一般に、液晶をヘキサン等で除去後に走査電子顕微鏡や原子間力顕微鏡(AFM)で行われてきたが、液晶を除去するための洗浄によるダメージが懸念されていた。そこで、液晶を除去せずに直接的に液晶と重合高分子の境界のトポロジーを解析出来る液中AFM観測手法を導入した。即ち、反応性メソゲンを添加したネマティック液晶の、せん断流れによる配向およびUV照射による配向転移メカニズムを解明するため、液中AFMを用いた実験を行った。結果として、液中AFM法を用いれば液晶を除去せずとも分子像が撮れることを確認した。しかしながら、狭域スキャナ(1μm角測定)を用いた像観測では、せん断流れによる配向異方性は撮像出来なかった。また、UV照射前後での液中AFM像にも有意な差は確認するには至っていない。UV照射によるポリマーの表面エネルギーの減少に伴いプレティルト角が増加することが確認できたことから、ポリマー表面のトポロジーの変化が原因でプレティルト角が上昇したのではないことが推測できた。3年目の実験項目として継続して取り組むことで結論が得られるであろう。 予定より前倒しして、スリットコータでの液晶塗工時に発生する異方的せん断流を利用し、棒状ナノ粒子を整列する手法の基礎的実験を行った。実験に用いたナノ粒子の分散性が悪かったことが原因で、ナノ粒子の異方的配列は今のところ確認できていない。また、ストライプ状マスクを介してのUV照射によって、水平配向領域と水平配向領域をストライプ状に分割形成することについては計画通り成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
液中原子間力顕微鏡による高分子トポロジー観測は、広域スキャナ(30μm)角を用いた液晶のメゾスコピックレンジでの配向観測を行うことで、せん断流による水平配向メカニズムについて最終的な実験及び考察を行う。また、UV照射によるラジカル重合反応を行いながらAFM観測をすることで高分子膜の成長をin-situ確認するユニットを取り付けることで、UV照射による垂直配向への転移についてメカニズムを明らかにする予定である。 スリットコーターによる棒状ナノ粒子の配向については、ナノ粒子の分散性および濃度を調整した後、最適な塗工条件を見出す。ナノ粒子については金ナノロッドおよびエボニクス社製ナノ粒子を用い、液晶中への分散性改良と並行して主なう予定である。本成果の社会展開として、ナノロッド太陽電池への適用を目指し、塗工型ナノロッド太陽電池の試作を目指す。ナノロッドの配向度の評価はAFM及びエリプソメータにて行う。配向が確かめられた場合は、フイルム上にナノロッドの塗工を行う。最終的には、フイルム状ナノロッド太陽電池である。
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