2013 Fiscal Year Research-status Report
マグノニクスのための超短磁場パルス発生によるスピン波励起
Project/Area Number |
25390057
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
長島 健 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センタ, 助教 (60332748)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 光物性 / テラヘルツ分光 / マグノニクス |
Research Abstract |
テラヘルツ領域の高周波数スピン波発生法として光パルス誘起近接磁場パルスを用いた新規機構を提案・開発している.まず磁場パルス発生機構を明らかにするため,光パルス誘起磁場パルスあるいはそれによって誘起された磁化パルスからのテラヘルツ波放射を測定した.Tb3Ga5O12(TGG)のようなファラデー回転の大きな物質は大きな磁化パルスを発生させる可能性がある.本年度は光パルス照射TGGからのテラヘルツ波放射測定に着手した. 予備測定の段階で,1.5 THzを中心とする比較的強度の大きい成分とブロードな成分からなるテラヘルツ波放射が観測された.これまでの代表者の研究により,磁気秩序が存在する場合には磁場パルスによって磁気共鳴が誘起され,その周波数のテラヘルツ波が顕著に増大することがわかっている.例えば反強磁性体NiOでは室温で約1.0 THzの反強磁性共鳴周波数に相当するテラヘルツ波が強く放射される.ところが本年度用いたTGGは極低温以外では常磁性体で磁気共鳴がないため,特定の周波数で大きな強度を持たないブロードなスペクトルのテラヘルツ波放射が期待された. 観測された1.5 THz近傍を中心とするテラヘルツ波放射成分は磁場パルスあるいは磁化パルスからのテラヘルツ波放射とは別の放射機構に起因する可能性がある.そこでTGGのテラヘルツ透過率の温度変化測定を実施した.この結果,これまで知られていなかった1.5 THz近傍を中心周波数とするブロードな吸収の存在を明らかにした.吸収線の周波数及び線幅の温度変化からフォノンによる吸収と考えられる.このことは1.5 THz近傍の成分は光パルスによってコヒーレントに励起されたフォノンからのテラヘルツ波放射であることを示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験装置のうち,光学系の構築は予定通り完了した.当初予定では,この後平成25年11月までに,試料冷却装置の改良,そして光励起NiO結晶からのテラヘルツ波放射特性を実施し,平成26年2月までに,光励起TGG結晶からのテラヘルツ波放射の温度及び偏光依存性を明らかにする予定であった.しかしながら,光学系確認のために予備的に実施したTGGの光パルス励起実験において特異なスペクトルを持ったテラヘルツ波放射が観測され,その機構の解明のためにTGGのテラヘルツ透過率の温度変化測定を実施したため,上記の項目が達成できなかった. 結果的には,当初予定になかったテラヘルツ透過率の温度変化測定により,これまで知られていなかったTGGの1.5 THz近傍のフォノンの存在を見出したこと,そしてそれが光パルスによってコヒーレントに励起されることでテラヘルツ波を放射していることを示した.このように当初予定になかった研究により十分な知見が得られたが,当初予定の作業項目が一部未達になったため,示したような自己評価になった.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,平成25年度に未達になった試料冷却装置の改良,そしてMnO及びTGG等からの光パルス励起によるテラヘルツ波放射の詳細な温度変化測定を実施する.研究計画段階ではNiOについても実施する予定であったが,これまでの研究で反強磁性体NiOのテラヘルツ波放射特性は同じく反強磁性体のMnOと類似していること,NiOの温度変化測定では別途高温セルが必要なことから,MnOの測定を重点的に実施する.この他,常磁性体(TGG)及び強磁性体(YIG)について測定をする. さらに平成27年度で作製予定の磁性体薄膜についても,作製条件の調査及び必要な装置の準備を開始する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年11月までに,試料冷却装置の改良,そして光励起NiO結晶からのテラヘルツ波放射特性を実施し,平成26年2月までに,光励起TGG結晶からのテラヘルツ波放射の温度及び偏光依存性を明らかにする予定であった.しかしながら,当初予定してなかった実験が追加されたため,上記の項目が達成できなかった. 平成26年度上期中に,平成25年度未達項目を実施する.研究計画時に予定していた平成26年度測定試料のうち,類似するものを取捨選択することで実験を短縮する.
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Research Products
(4 results)