2014 Fiscal Year Research-status Report
450 mm直径Si単結晶育成における点欠陥の精密制御に関する基礎研究
Project/Area Number |
25390069
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Research Institution | Okayama Prefectural University |
Principal Investigator |
末岡 浩治 岡山県立大学, 情報工学部, 教授 (30364095)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 半導体 / シリコン単結晶 / 点欠陥 / 熱応力 / 大口径化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の全体的な構想は,半導体Si単結晶育成において,熱応力の影響を考慮した点欠陥挙動シミュレータを開発し,産業界における450 mm直径の無欠陥Si単結晶の実現に貢献することである.第一原理計算法を用いて熱応力が点欠陥の形成・拡散エンタルピーに与える影響を定量的に求め,その結果をVoronkov 理論に適用する手法に特徴がある.固液界面の熱応力成分は平面圧縮応力に近いことから,平成25年度には,等方的な平面応力が点欠陥の形成・拡散エンタルピーに与える影響の第一原理計算を行い,産業界で行われた実験を定量的に説明した. 結晶中心付近を除いて固液界面の熱応力成分は異方的な平面圧縮応力となっており,さらに結晶外周付近では1軸性の圧縮応力となっている.平成26年度は,予定どおり,この異方的な平面応力あるいは1軸応力が点欠陥の形成・拡散エンタルピーに与える影響について研究した.その結果,平均応力に換算した時に,Voronkovの臨界v/Gの応力依存性は平面応力が等方的であるか異方的であるかによらずほぼ等しいことがわかった.これがSi結晶径方向の様々な部位のデータが実験値に含まれるにもかかわらず,計算値との一致がよい理由と推定した.なお,1軸応力と平面応力とで臨界v/Gの計算値は大差なかった. 応力効果を考慮した数値シミュレータは,研究協力者がグローバルウェーハズ・ジャパン社において開発中である.市販シミュレータであるCZ-Sim(STR-Japan社製)を用い,第一原理計算により得られた点欠陥物性値の熱応力依存性を組み込んだ.現在,大口径Si結晶の欠陥分布を計算中であり,実験結果の再現性について検討を進めている. なお,平成26年度中に,本研究に関して3件の国際会議招待講演を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は,固液界面近傍における熱応力成分が異方的な平面圧縮応力であり,さらに結晶外周付近では1軸性の圧縮応力となっていることを考慮して,これらの応力が点欠陥の形成・拡散エンタルピーに与える影響について研究した.具体的には,第一原理計算法を用い,(1)x,y方向の圧縮応力をσx : σy = 1 : 1(等方的な平面応力),2 : 1,5 : 1(異方的な平面応力),1 : 0(1軸応力)と変化させながらz方向のセル長をフリーにして構造最適化を行い,セルの全エネルギーと点欠陥による緩和体積を求め,(2)これらの結果を用い,点欠陥の形成エンタルピーと臨界v/G値の応力依存性を得た.その結果,平均応力に換算した時に,Voronkovの臨界v/Gの応力依存性は平面応力が等方的であるか異方的であるかによらず,さらに1軸応力であってもほぼ等しいことがわかった.これがSi結晶径方向の様々な部位のデータが実験値に含まれるにもかかわらず,計算値との一致がよい理由と推定した. また,応力効果を考慮した数値シミュレータの開発においては,市販シミュレータであるCZ-Sim(STR-Japan社製)を用い,第一原理計算により得られた点欠陥物性値の熱応力依存性を組み込んだ.現在,大口径Si結晶の欠陥分布を計算中であり,実験結果の再現性について検討を進めている. 以上を総括して,第一原理計算ならびに数値シミュレータの開発において,今年度の達成度は(2)おおむね順調に進展している,と自己評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は応力効果を考慮した数値シミュレータの完成を目指す.具体的には,グローバルウェーハズ・ジャパン社においてこれまでに,および今後行う大口径Si結晶育成実験により得られたGrown-in欠陥分布について,本シミュレータによる計算結果と比較する.さらに必要に応じて点欠陥パラメータの微調整を行い,今後実用化される450 mm直径Si結晶における点欠陥制御技術への活用を目指す. さて,450 mm直径のSi結晶はCzochralski法で育成するため,必ず格子間酸素を含んでいる.また,300 mm直径までのSi結晶育成で行われてきたように,Grown-in欠陥抑制のため窒素や炭素,水素を添加する可能性が高い.さらにドーパントであるBやP,Asなども,デバイス側の要請によって幅広い濃度範囲で添加する.これらの不純物は,熱応力と同様に点欠陥濃度に影響を与えることが実験的に知られているが,実験結果を統一的に説明できるモデルは確立されていない. 450 mm Si結晶における点欠陥の精密制御技術を確立して高品位化を達成するためには,本研究で達成予定の熱応力効果を考慮した数値シミュレーション技術において,不純物効果も含むシミュレーション技術へと拡張することが必要である.これが次の研究課題であり,そのため昨年度から不純物が点欠陥に与える効果に関する第一原理計算も始めている.とくに,不純物原子が点欠陥形成に影響する領域を求め,その領域内のすべてのサイトにおいて形成エネルギーや形成エントロピーを求めることで,不純物効果に関するメカニズムを解明するとともに,実験結果を統一的に説明できるモデル開発を目指したい. Si結晶育成における熱応力効果と不純物効果を同時に考慮した点欠陥制御技術に関するこの一連の研究が完成すれば,今後Geや化合物半導体結晶などの高品位化に役立つ波及効果がある.
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Causes of Carryover |
1,403円の残額が生じたが,これは物品費が予定より安価であったためである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度,物品費の使用予定額に加算して使用する.
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Remarks |
研究成果を掲載しています.
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