2013 Fiscal Year Research-status Report
有機硫黄化合物による色素増感太陽電池用酸化チタンの表面修飾
Project/Area Number |
25390077
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
下村 勝 静岡大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20292279)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 酸化チタン / 色素増感太陽電池 / 表面分析 |
Research Abstract |
我々は、色素増感太陽電池における光電極に使用される、アナターゼ型の二酸化チタン多孔質膜表面への硫黄系有機化合物の吸着構造について研究を行っている。これまでの研究で、二酸化チタン多孔質膜をピロリジンジチオカーバメート(PDTC)溶液に浸漬させることによって、太陽電池性能が向上することを見いだした。その原因としてX線光電子分光(XPS)によって、色素に含まれる硫黄、窒素などの量が増加することから、色素吸着量が増加することを予想した。しかし、PDTCの中にも硫黄と窒素原子が存在することから、PDTCの増加と色素の増加を区別するには至っていなかった。色素のみに含まれる元素としてルテニウムがあるが、XPSではルテニウムのピークと炭素のピークが近いことから、ルテニウムを的確に分離して定量することは難しい。本年度は、電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)を用いて、PDTC処理前後に置ける色素に含有されるルテニウム量の変化を定量的にした。その結果、PDTC処理によってルテニウム量が20%程度増加しており、太陽電池特性における光励起電流量とよく対応することが判明した。 また、単に硫黄原子が表面に存在することが色素の増加に直結するのか、あるいはその化学形態が重要であるのかを区別するために、PDTC、硫酸アンモニウム、多硫化アンモニウムを用いて色素吸着量の比較を行った。その結果、PDTCを使用した場合のみ、色素に含有されるルテニウムの量が増加することが分かった。以上のように、表面に吸着した化学形態が重要であることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に25年度の計画として予定していたXPSによる調査は一部達成された。単結晶基板の面方位による吸着様式を明らかにする研究が残っており、これは26年度に実施予定である。一方、申請段階では予定していなかったEPMAによる調査、PDTC以外の硫黄分子を用いた研究が進んだため、上記の判断とした。
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Strategy for Future Research Activity |
単結晶基板による理想表面の研究を実施する予定である。25年度末に本学の共同利用機器として、ガスクラスターイオン銃を備えたXPS装置が納入された。これを用いて、アルゴンガスクラスターによって表面を丁寧に清浄化し、予定されていた含硫黄分子の吸着様式の研究を進めたい。
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