2014 Fiscal Year Research-status Report
有機硫黄化合物による色素増感太陽電池用酸化チタンの表面修飾
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25390077
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
下村 勝 静岡大学, 工学研究科, 准教授 (20292279)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 酸化チタン / 色素増感太陽電池 / 表面処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究によって、色素増感太陽電池の光電極に使用される、アナターゼ型二酸化チタンの表面に硫黄系有機分子であるアンモニウムピロリジンジチオカーバメート(APDTC)を吸着させることで、短絡電流が増加することを見出した。今年度は、陽イオンをアンモニウムイオンから別のナトリウムイオンに変更したNPTDCを用いることでどのような効果があるかを調べた。そして、NPDTCの場合には電流の増加はAPDTCほどでは無かったが、APDTCでは若干減少していた開放電圧が増加することを見出した。 NPDTCを用いて表面処理した場合の酸化チタン多孔質膜をX線光電子分光(XPS)によって評価した結果、APDTCの場合と同じく酸化した硫黄が吸着していることが判明した。本成果は、INTERNATIONAL INTEGRATED ENGINEERING SUMMIT (IIES2014) (UTHM, マレーシア, 2014.12) 等で発表した。 単結晶基板を用いて、理想的な表面を調整し、そこに分子を吸着する実験を行うため、ルチル型酸化チタン単結晶基板を用いてアルゴンガスクラスターイオン銃(Ar-GCIG)で清浄化する基礎研究を行った。そして、Ar-GCIGによって、加速電圧5kV、クラスターサイズ1000原子の条件下で、表面の汚染が除去できることがわかった。さらに、5kV、モノマーの条件では、酸素が優先的に脱離する現象が観察されたが、Ar-GCIGでは酸素の脱離による表面の金属化もほとんど見られず、広範囲にわたって均一な清浄化ができることがわかった。本成果は、 日本表面科学会中部支部学術講演会(名古屋大学, 2014.12)にて発表した。 本研究は、酸化チタン単結晶表面上にヘテロ有機分子を吸着させ、表面改質を行うことを目的としている。関連する研究として、シリコン表面上にヘテロ有機分子であるトリメチルフォスフィン等を吸着させ、走査トンネル顕微鏡による観察を行った。本成果は、Journal of Physical Chemistry Cに掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では単結晶表面上に有機分子を吸着させ、その表面構造を調べる内容が計画されていた。本年度の研究によって、Ar GCIGによって酸化チタン単結晶の清浄化は可能であることが示唆されたが、実際に有機分子を吸着させて評価する研究にはまだ入れていない。このため、上記の評価とした。ただし、PDTCの陽イオンをナトリウムに変更することで開放電圧が上昇する現象を新たに見出したことなど、計画時には無かった部分での進展もあったことを併記したい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度で最終年となるため、本課題をまとめ上げ、高効率太陽電池の作製を完成させたいと強く思っている。このため、上記の単結晶を用いた理想的条件による表面構造解析と並行して、実際のセルを用いた表面処理条件の最適化にも同時に取り組むことを計画している。特に、1. 表面処理前の酸化チタン基板の焼成中のガス雰囲気の調整を行うこと、2. 薄膜を数回に分けて焼成することで、品質を向上させること、3. 酸化チタンナノ構造(ナノチューブなど)を薄膜中に埋め込むことなどの研究を精力的に進める予定である。
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Causes of Carryover |
26年度に酸化チタン単結晶基板を購入予定であったが、現状で使用可能な基板が残存していたため、次年度に繰り越すことにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越金額によって前年度分の酸化チタン単結晶基板の購入を予定している。
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