2014 Fiscal Year Research-status Report
X線支援原子間力顕微鏡XANAMの量子干渉効果に基づく理解
Project/Area Number |
25390079
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鈴木 秀士 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30322853)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 走査プローブ顕微鏡 / 放射光X線 / 探針-試料間相互作用 / 内殻電子励起 / 力場解析 / X線誘起 / 量子干渉 / 化学結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、将来の電子デバイスやエネルギーデバイスの開発に必要とされる基板表面の構造解析と化学状態分析をナノレベルで行う装置開発に関するものである。具体的には、NC-AFMで基板表面の特定の構造を観察すると同時に、放射光X線により試料-AFM探針間相互作用に摂動を誘起することで、構造に一対一に対応したナノスケールの元素・化学情報を提供するものである。本手法を、X線支援非接触原子間力顕微鏡;X-ray Aided Noncontact Atomic force microscopy(XANAM:ザナム)と呼ぶ。本手法では元素識別に必ずしも原子像を必要とせず、複雑組成の電子デバイス、触媒粉体や半導体量子ドットといったナノ材料への幅広い適用を目指すものである。これまでの測定から、相互作用力のエネルギー依存性から試料表面の元素種を識別可能な事を示し、エネルギー依存性の詳細な測定法の検討を行ってきた。本年度は、相互作用力を静電的相互作用、van der Waals力、化学(共有)結合力に分離して、入射X線エネルギーに対する個々の成分の依存性の検討を行った。その結果、金属間に生じるX線照射誘起の局所的な鏡像電荷効果、またはカシミール相互作用効果の存在が示唆された。また測定したX線エネルギー領域で探針-試料間の接触電位差が補償される仮定の下で、静電的相互作用の変化と2次電子放出やホール生成の関連を検討した。これはX線エネルギーによる電位変化の探針-試料間のナノ空間の情報を与え、XANAMと同様の斜入斜X線光学系を用いるX線異常散乱や回折実験に対して有用な情報も与える。また化学結合力、van der Waals力については、引き続きX線エネルギー依存性の詳細の検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、前年度に整備した走査探針によるX線検出系の改良がうまくいき、データの取得が十分に行えた。また同時に、測定法の改良に重点を置いてきた流れを、解析法の拡充へ発展できた。具体的には、Sader法と呼ばれる力場解析法と、力場の分離方法について、独自にプログラムによるソフト開発を行い簡便に行えるよう整備した。この開発に少し時間を要したため、学会発表等は、前年に比べて少し少なくなったが、前年同様、国内外学会の研究者の交流を通して、有意義な議論の機会を得た。最終年度に向けた準備が出来たと言え、おおむね順調という判断をした。
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Strategy for Future Research Activity |
走査プローブ顕微鏡分野だけでなく、X線光学系を軸とした分野においても、同様のナノスケール元素分析を目指す研究が近年活発化している。その中で、唯一、探針-表面間の引力相互作用のX 線エネルギー依存性を測定する手法として実験と検討を地道に重ねてきた。そして現状でようやく、測定の根本的な部分においては正しいと、確信に似たものを得るに至った。今後は、研究体制は現状を維持しつつも、研究結果の発信速度を今よりも上げたい。
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Causes of Carryover |
実験進行の都合で、本年度は研究遂行上必須な、2つの機器の修理が生じたため、その修理に合計で30万円ほど経費がかかり、予算上はずれが生じたが、当初の目的は別途、財団からの寄付金により補填し実施することができたため、研究遂行上の問題はなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、本年度と同様の予算規模であり、消耗品の他、実験旅費および国内外発表のための旅費に使用する予定である。今のところ、本年度のような機器の故障による修理費は発生していない。
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