2014 Fiscal Year Research-status Report
4d遷移金属超薄膜・ナノ粒子のスピン偏極表面準位と強磁性発現機構の解明
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25390080
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
川越 毅 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (20346224)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Pd薄膜 / 表面ナノ構造 / 局所状態密度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、Pd超薄膜の強磁性発現の実験的検証を目指しPd(001)薄膜の「表面ナノ構造・局所状態密度・磁性」の関連を調べている。昨年度までに現有の試料成長室・STM観察室を備えた超高真空STM/MBE装置を用い、Au(001)表面上に高品質なPd(001)超薄膜をエピタキシャル成長法によって1-4原子層(ML)作製し、表面ナノ構造・トンネルスペクトルの評価を行った。 本年度はさらに詳細な膜厚依存性を調べるためPd(001)薄膜4-20MLの表面ナノ構造をLEED,STMによって調べ、大気中で極カー効果により磁化測定を行った。具体的にはAu(001)清浄表面に特有な(5×28)再配列構造を確認後、4MLまでPdを室温蒸着し、その後は基板温度200度でPdを蒸着した試料について観察を行った。STM観察はW探針を用いて室温で行った。 LEED観察の結果、明瞭な4回対称のp(1×1)構造が確認され、Pd薄膜はAu(001)上に良好にエピタキシャル成長していることがわかった。またLEED像から求めた格子定数のPd膜厚依存性を詳細に調べた結果、格子拡張していることを確認した。(4MLで4%、12MLで3%格子拡張する。)Pd膜厚8MLまでは原子レベルで平坦なテラスを形成されるが、膜厚によってテラス幅が異なることがわかった。また膜厚12ML以上では格子緩和に伴うナノ構造も観察した。これまでの実験でPd(001)薄膜が強磁性を示す可能性があるため、第一段階として1-20MLまでのPd(001)薄膜を作成し、室温・大気中での極カー効果の測定を行った。しかし、現在までのところ強磁性を示す実験的な証拠を得ることはできなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H25年度までにMBE法によって清浄表面を有する高品質Pd(001)薄膜1-4MLの作製法を確立し、そのSTS(dI/dVスペクトル)を測定し、表面準位の観測に成功した。H26年度の当初の計画は、1)Pd(001)薄膜が強磁性を示す可能性があるため、第一段階として1-20MLまでのPd(001)薄膜を作成と室温での磁化測定による強磁性の検証 2) STM/STS観察による、形状構造とスピン偏極表面準位(状態密度)のPd膜厚依存性と量子井戸準位の形成による状態密度の変化の観測 の2点であった。 具体的には、Au(001)清浄表面上にMBE法を用いてPd(001)薄膜(4-20ML)を作成し、その表面構造をLEED,STMによって詳細に調べた。その結果表面ナノ構造の詳細、格子拡張のPd膜厚依存性、格子緩和に伴うナノ構造の観察等に関する知見を得ることに成功した。以上の点は当初の計画していた実験を行うことにより得られた成果である。すなわち、Pd超薄膜の強磁性発現の実験的検証を目指してPd(001)薄膜の「表面ナノ構造・局所状態密度」の詳細の情報をえることができた。 強磁性を示す実験的な証拠を得るために、室温・大気中での極カー効果の測定を行った。しかしながら室温・大気中ではPd(001)薄膜(4-20ML)が強磁性を示す実験結果をえることは出来なかった。今後の課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、Pd超薄膜の強磁性発現の実験的検証を目指してPd(001)薄膜の「表面ナノ構造・局所状態密度・磁性」の関連を調べることである。特にスピン偏極STMの手法を用いてPd超薄膜の強磁性発現機構を微視的な観点から直接的にとらえることに主眼がある。これまでの研究でPd(001)薄膜の「表面ナノ構造・局所状態密度」については多くの知見を得ることに成功した。今後はさらに磁性との関連をスピン偏極STMの手法を用いて詳細の実験を行うことを計画している。その前段階として、MBE法によって作成した高品質Pd(001)薄膜に対して巨視的な磁化測定を行い、強磁性の確認を行うことが必須である。 Pd(001)薄膜(1-20ML)を作成し、室温・大気中での極カー効果の測定を行ったが、現在までのところ強磁性を示す実験的な証拠を得ることはできなかった。 強磁性を検出できなかった理由として、1)大気中での測定のため不純物の影響が大きいこと、2)格子緩和の影響によって状態密度が増強していないこと、3)詳細な膜厚の測定を行っていないこと、4)低温での測定を行っていない などの点があげられる。 今後は大気中での影響を排除するため、超高真空下でのKerr効果の実験を計画している。現有の装置では超高真空下でKerr効果の実験ができないため、東京大学物性研究所の共同利用施設を利用することを検討している。
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Causes of Carryover |
本年はターボ分子ポンプを購入し、残額がゼロになったので、前倒し支払を20万円をいただいた。。次年度使用額はそのうち約5万である。これは本来次年度に予定していた金額である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H27年度は最終年のため、物品費は実験に必須な消耗品等の購入とこれまでに得られた成果を国際会議等で発表するため、外国旅費などを使用する予定である。
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[Journal Article] Spin reorientation and large magnetic anisotropy of metastable bcc Co islands on Au(001)2014
Author(s)
T. Miyamachi, T. Kawagoe, S. Imada, M. Tsunekawa, H. Fujiwara, M. Geshi, A. Sekiyama, K. Fukumoto, F. H. Chang, H. J. Lin, F. Kronast, H. Durr, C. T. Chen, and S. Suga
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Journal Title
Physical Review B
Volume: 90
Pages: 174410/1-7
DOI
Peer Reviewed
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