2014 Fiscal Year Research-status Report
RHEED入射電子波動場による励起-オージェ電子と表面プラズモン-
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25390085
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Research Institution | Daido University |
Principal Investigator |
堀尾 吉已 大同大学, 工学部, 教授 (00238792)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 反射高速電子回折 / 波動場 / オージェ電子 / ロッキング曲線 / 表面波共鳴 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度ではSi(001)2x1表面を対象に、RHEED入射電子励起によるオージェ電子強度異常について調べた。約200K以下で現れる凍結されたSi(001)c(4x2)構造は精力的に調べられているものの、室温あるいは1000K付近の高温ではSiダイマーの高速フリップフロップ運動のため、表面構造の十分な理解が得られていない。そこで、この動的表面構造に対して投影ポテンシャル法を提案し、それによる解析を行ったところ、室温から高温に向けてダイマー形態が非対称構造から対称構造に推移することを解析した。更に、この表面構造モデルを基にRHEED入射電子が形成する波動場を計算したところ、実験測定で得られたSiのBRAESプロファイル(オージェ電子強度の入射電子視斜角依存性)と比較的よい相関関係が得られた。 入射電子波動場の振舞をより詳細に調べるため、ZnO(0001)のような2元素から成る単結晶表面についてもBRAESプロファイル測定を行った。試料表面の清浄化については慎重に600℃までの加熱を繰り返し行ったが、炭素のオージェピークは比較的強く残存した。予備的にBRAESプロファイルとロッキングカーブ測定を行った結果、酸素と亜鉛のそれぞれのBRAESプロファイルに現れる強度異常は特異的結果が得られている。今後、清浄化のため更に高温加熱して炭素の除去を試みる予定である。 エネルギーフィルターは完成したので予備実験としてPtナノクラスタを観察した。エネルギーフィルターにより、バックグランド強度を抑えたコントラストの高いパターン観察が可能であることを確認した。 中速電子回折についても波動場の振る舞いを調べるため電界放射電子銃を自作し、Si(001)2x1表面の観察を行った。その結果、超格子斑点の現れる入射条件が限定的であることがわかり、表面波共鳴条件との関わりについて今後検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
室温および高温での2重分域のSi(001)2x1表面の[110]入射方位でのロッキング曲線の動力学的解析から表面構造解析を行った結果は学術論文に掲載された。また、この表面に対するBRAESプロファイルの測定を行い波動場を用いた解析結果も学術論文に掲載された。 しかしながら、単分域のSi(001)表面については未だ実験測定しておらず、重要と思われる二元結晶表面のZnO(0001)について先行して実験測定を開始した。この表面の清浄化に手間取り、現在予備的であるもののロッキング曲線とBRAESプロファイルの計測を行ったところである。 また、エネルギーフィルターについては製作精度が不十分なため再度製作することにより、計画から少し遅れた。しかしながら、現在ほぼ完成し、予備的観察実験は終えたところである。次年度からエネルギー損失スペクトルの測定に入る予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は最終年度であるため、研究成果を上げるべく取り組む。具体的には現在進行中の二元結晶であるZnO(0001)表面と更にInP(111)表面についてもロッキング曲線の動力学的解析およびBRAESプロファイルの波動場解析を行う。 また、Si(001)表面も含め、これらの表面に対するエネルギー損失スペクトルを測定し、波動場との関連性について調べる。また、可能であれば単層グラフェンに対しても同様な実験測定と解析を行う。 これら複数の表面構造に対する結果を踏まえ、従来のRHEED法が単にロッキング曲線からの構造解析に留まらず、入射電子波動場の振る舞いから局所電子励起に如何に貢献できるかを明らかにする予定である。 更にFE-MEED実験においては電子線の収束性を改善すべく、新たな明るさ出し電極を挿入したいと考えている。
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Causes of Carryover |
研究成果発表の出張に必要な経費を少し抑えたことが主たる原因であるが、全体的に使用額はほぼ計画通りである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度はまとめの最終年度であり、実験も追い込みに入る。そのため、当該助成金は本研究推進の実験研究経費に充当する予定である。
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