2013 Fiscal Year Research-status Report
可視域短波長光の視覚光学的研究 ―最適な青色原色の探求―
Project/Area Number |
25390091
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
阿山 みよし 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30251078)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠田 博之 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (40278495)
大沼 一彦 千葉大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (70203875)
石川 智治 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90343186)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ディスプレイ / RGB原色 / 視覚光学 / 青色光 / 感性評価 |
Research Abstract |
現在のカラーディスプレイのRGB三原色はブラウン管テレビ用蛍光体の特性から決められてきた。超広色域ディスプレイの発展と普及を鑑み,視覚科学的視点から最適なRGB三原色の検討が必要である。本研究は,RGB三原色の内、様々な要因で個人差の影響が最も強く現れるB原色に着目し,眼光学的特性,心理物理学的特性,感性評価の総合データからディスプレイのB原色としてベストバランスの青色光同定を目的とする。 平成25年度は、RとG原色は固定し、B原色のみ波長を変化させて様々な画像を投影する装置を製作した。二台のプロジェクターを縦に並べ,片方からはBのみの,もう一方からはR,Gのみの同一の画像を表示する.B出力プロジェクターのレンズ前にピーク波長が430nm、450nm、470nm、480nmの干渉フィルターを置き,表示する青色波長帯を変化させる. RG出力プロジェクターのレンズ前にはNDフィルターを置き適宜減光させ、さらにゲイン調整を行い、白色点がほぼ同一となるようにした.2台のプロジェクターからの画像がぴったり重なるようにプロジェクター固定板は,後方を0.001mm単位で上下でき,スクリーン上の画面では0.05mm単位で微調整可能にした.長さ2m、幅1.5m、高さ1.8mの暗幕で覆われたブース内に上記投影システムを設置し、視距離約1.5mとなるように被験者位置を決めた。 簡単なテストパターンの評価実験からは450nmと470nmが好成績となった。今後自然画像での評価実験を実施する。B原色が変化することによる画像の感性評価なので、該当する色域の色が含まれている方が影響を明確に検証できる。そこで自然画像100枚の色度分布を調査した。また画像評価に用いられる評価語を収集し、感性評価実験の準備を整えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度の実施計画は、(1)フリッカー実験と(2)眼球内散乱特性測定実験と(3)B原色が異なるLEDパネル視認性実験であった。共同研究者間での議論により装置上の問題から(2)と(3)を先行させた。 (2)は、20代の視力正常者11名で心理物理学的手法により眼球内散乱度推定実験を行い、視力正常者間の相違を検出でき、新しい測定手法の開発も進み、概ね順調である。 (3)は、当初は現有装置を使用する予定だった。それらは、R原色は630nm、G原色は525nm共通で、B原色が430nm,450nm,470nm,490nmである4台のLEDパネルだが、解像度が不十分で一般的な画像は表示できない。申請時から採択時までの期間に、当該パネルを用いて文字パターン読みやすさ評価実験を実施し、またパネルの色度・輝度を測定した。これらから、異なるB原色条件で白色の色度・輝度を揃えること、及び様々な画像が提示できることの必要性が示された。 そこで、新しいプロジェクター装置製作に着手したが、RG原色とB原色の2台のプロジェクター画像をピクセルレベルで重ねる装置製作に時間がかかった。また、色度・輝度測定には、2次元分光色彩輝度計を用いてRGBパターンを同時測定する予定であったが、その測定器は三刺激値導出にXYZ擬似フィルターを用いており、単色性の強い色光では正確に測定できないことが明らかとなった。そこで、モノクロメータ内蔵の分光色彩輝度計で測定することになり、一度に一色しか測定できないので、色度・輝度測定に大幅な時間がかかった。 (1)については、(2)や(3)の実験の被験者と同一被験者群での測定が望ましいので、平成26年度に着手する。現在までに、プロジェクター装置製作、測光・測色、刺激画像候補の色度分布調査、評価後絞り込み、観察者の視覚光学特性と眼球内散乱度測定、が終了している。
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Strategy for Future Research Activity |
まず2台のプロジェクターにより、RとG原色は固定でB原色のみ430nm,450nm,470nm,490nmと変化させる画像投影システムを用いて自然画像の感性評価実験を行う。刺激画像は主として青領域、青緑領域、黄赤領域、全域に色度点が分布する画像群から数枚ずつ選択する。感性評価は20語程度の評価語を用いてその程度を主観的に決めるSD法を用いる。感性評価語群は、これまでの申請者の研究実績で採用してきた手順により200語以上の形容詞から色彩感性評価に相応しい20語程度に絞り込んで、順不同の回答用シートを作成する。画像を提示し、被験者には印象評価を記入するよう指示する。被験者は10名程度とする。 簡易型眼球内散乱光測定装置製作する。上記の評価実験に参加する被験者の眼球内散乱光測定を行う。また、カラーLEDを用いた簡易型分光感度測定装置を製作する。これにより、上記の評価実験に参加する被験者のフリッカー法と直接比較法の分光感度、黄斑色素濃度測定を行う。 上記の結果を比較検討する。感性評価の観点からの最適B原色のピーク波長は何nmか、また個人差の有無が明らかとなる。好ましいB原色に個人差がある場合には、各個人の視覚光学的特性との関係を検討できる。同一被験者群での視覚光学特性を比較した研究は未だ数少ない。第1段階として健常な若年被験者群での個人差の検討を行い、健常な高齢被験者群、白内障被験者群と広げて行くことにより、今後高齢者層にも広く普及するパーソナルディスプレイのカスタマイゼーションにも役立つ知見を提供すると考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は3回程度宇都宮大学、千葉大学、立命館大学の共同研究者が物理的に集まる研究報告会を開催する予定であったが、日程調整がつかずインターネットを用いての報告となり、立命館大学および千葉大学においては旅費に使用予定であった金額が次年度使用となった。さらに千葉大学においては、眼球内散乱測定の新方式を開発する際に、当初光学濃度0~2.0の円形線形可変NDフィルター(約6.5万円)を購入予定であったが、現有のガラスフィルターの組み合わせで十分であることがわかり、相当分が余剰となった。 平成26年度は、宇都宮大学、千葉大学、立命館大学の共同研究者が物理的に集まる研究報告会を宇都宮大学で開催する。また、平成26年11月に東京都文京区で開催予定の日本光学会年次学術講演会が開催される。次年度使用となった研究費は、これらの研究打ち合わせおよび学会発表への旅費として使用予定である。
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Research Products
(5 results)