2013 Fiscal Year Research-status Report
量子ビームによる銅酸化物高温超伝導体のスピン格子相関の研究
Project/Area Number |
25390132
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
脇本 秀一 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究主幹 (40399415)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 高温超伝導 / 中性子散乱 / スピン格子相関 |
Research Abstract |
過剰ホールドープ領域に位置するLa2-xSrxCuO4について、米国オークリッジ研究所のパルス中性子源SNSに設置されたチョッパー型中性子分光器SEQUOIA を用いた高エネルギー中性子散乱実験と、欧州放射光施設ESRFのID08AXES を用いたCu-L3吸収端共鳴X線非弾性散乱実験を行い、300 meV付近までの高エネルギー磁気励起の全貌について調べた。その結果、150 meV以上の高エネルギー部分における磁気分散関係は、反強磁性絶縁体である母物質La2CuO4のスピン波分散と一致していることを明らかにした。このことから、磁気励起はホール濃度依存性の少ない高エネルギー部分と、ホール濃度依存性の非常に強い低エネルギー部分にわかれる階層構造を持つ可能性が示された。また、最適ドープ近傍のLa2-xSrxCuO4を用いて、J-PARC MLFに設置されたチョッパー分光器「四季」を用いた中性子散乱実験から、18 meV付近の低エネルギー磁気励起がそこを横切るフォノンと強くカップルしている可能性を示すデータが得られた。これらの結果を総合すると、低エネルギー部分は動的ストライプ現象に起因する磁気揺らぎであり、電荷の揺らぎを通して格子と結合する可能性が示唆される。 極低ホール濃度領域の磁気電気効果を調べるため、母物質La2CuO4の単結晶育成を行い、電気化学的手法による過剰酸素の制御により極低ホール濃度領域の試料調整を試みたが、現在のところ、目的とする組成試料は得られていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最適ドープ付近の組成での実験から低エネルギー磁気励起とフォノンの結合を示唆する結果を得られたこと、過剰ドープ組成による実験から、磁気励起の階層性が示せたことから、概ね順調に進展している。極低ホール濃度領域については試料調整が困難であるが、平成26年度には実験が可能なものと考えている。また、低濃度領域組成についても研究協力者から資料提供を受けることが決まっており、平成26年度に実験を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
最適ドープ付近で確認された低エネルギー磁気励起とフォノンの結合について、組成依存性、温度依存性を調べることでその詳細を明らかにしていく。また過剰ドープでの実験から明らかになった階層性と合わせて考えると、低エネルギー領域の磁気励起が動的ストライプ現象に起因する可能性を示唆しており、これらの解明を目指す。低ホール濃度領域については偏極中性子散乱を用いて磁気秩序と磁気揺らぎの偏極性をしらべ、階層性をまたいでどのような差があるかを明らかにすることで、階層性の起源の理解に資するデータを得る。極低ホール濃度領域については、誘電測定を行い、磁気電気効果の観測を行う。これらのホール濃度横断的な研究を通してスピン格子相関を明らかにすることを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
極低ホール濃度組成の調整が難航したため、誘電測定用機器を購入できなかったため。 平成26年度に誘電測定機器購入に充てる。
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Research Products
(3 results)