2014 Fiscal Year Research-status Report
生きている細胞の内部構造とその変化をその場観察するハイブリッド顕微鏡の開発
Project/Area Number |
25390134
|
Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
加道 雅孝 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究主幹 (30360431)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 軟X線顕微鏡 / 蛍光顕微鏡 / ハイブリッド顕微鏡 / 生きている細胞 / アポトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
生きている細胞を蛍光顕微鏡と軟X線顕微鏡で同時に観察可能な“ハイブリッド顕微鏡”の本体部の設計を行った。具体的には、(1)軟X線源と試料を格納するための真空容器と真空排気装置、(2)出力20 J、パルス幅600 psの高強度レーザーを金属薄膜ターゲットに集光照射するためのレーザー集光部およびターゲット部から構成され、(3)平成25年度に開発した新型試料ホルダーを取り付けることにより生きている細胞の軟X線顕微鏡像と蛍光顕微鏡増を同時に撮像可能な構造として設計を行った。倒立型蛍光顕微鏡の試料ステージ上に設置できる十分にコンパクトな大きさとなるよう設計を行った。 高強度レーザーを金属薄膜ターゲットに集光する集光レンズは、真空容器に直接取り付けることとし、蛍光顕微鏡観察時に真空容器を移動した際にレーザーのターゲットへの集光がずれないような構造とした。試料ホルダーは、真空容器底面に外部から取り付け、容易に細胞試料を交換できる構造とした。軟X線顕微鏡本体部を倒立型蛍光顕微鏡の試料ステージ上に直接取り付けることにより細胞の軟X線顕微鏡像と蛍光顕微鏡像を同時に取得できる構造とした。 これらの設計により、細胞機能発現の過程を蛍光顕微鏡によりリアルタイム観察しながら、機能発現の重要な瞬間を見きわめて軟X線顕微鏡により高い解像度で観察することが可能となる。このことにより、様々な生命現象を理解する上で重要となる細胞の機能と構造の相関を直接観察することが可能となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究の目的は、生きている細胞を蛍光顕微鏡と軟X線顕微鏡で同時に観察可能なハイブリッド顕微鏡の開発である。平成26年度の研究実施計画は、軟X線顕微鏡本体部を倒立型蛍光顕微鏡の試料ステージ上に直接取り付けることにより細胞の軟X線顕微鏡像と蛍光顕微鏡像を同時に取得できる“ハイブリッド顕微鏡”本体部の設計と製作を行うというものである。ハイブリッド顕微鏡に使用する高強度レーザーの高繰り返し運転が可能となり、元々考えられていたシングルショットベースの仕様を見直す必要が生じたので設計変更を行った。これにより、より高性能なハイブリッド顕微鏡を実現することが可能になるが、年度内に製作まではいたらなかった。レーザーの高繰り返し運転に対応したより高性能なハイブリッド顕微鏡本体部の設計は完了した。平成26年度の研究実施計画からの若干の遅れがあるが、おおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、平成26年度に完了した、生きている細胞を蛍光顕微鏡と軟X線顕微鏡で同時に観察可能なハイブリッド顕微鏡の製作を行うとともに、平成25年度に製作した新型試料ホルダーと組み合わせ、ハイブリッド顕微鏡として完成させる。これまでに実績のあるマウスの精巣ライディッヒ細胞を用いてハイブリッド顕微鏡による蛍光顕微鏡と軟X線顕微鏡による同時観察を実施することによりその性能試験を実施する。 さらに、ハイブリッド顕微鏡の生命科学研究への活用の一例として、アポトーシスを起こした細胞核の構造変化を観察する。プログラムされた細胞死であるアポトーシスは生命体の生存にとって非常に重要な生命現象の一つであり、これまでの蛍光顕微鏡を用いた研究で、アポトーシスを起こした細胞核は、DNAが細胞核周辺に集まるリング形状、DNAの断片化に伴うネックレス形状、DNA凝縮、核崩壊という過程をたどることがわかってきているが、その詳細な構造変化は解明されてこなかった。開発したハイブリッド顕微鏡を活用し、蛍光顕微鏡と軟X線顕微鏡による同時観察を行うことで、これまで明らかにされてこなかったアポトーシスによる細胞核の詳細な構造変化を観察することが可能になり、これを示すことでハイブリッド顕微鏡の有用性を実証する。
|
Causes of Carryover |
ハイブリッド顕微鏡に使用する高強度レーザーの高繰り返し運転が可能となり、より高性能なハイブリッド顕微鏡を実現するための設計変更を行うことで、平成26年度に計画していたハイブリッド顕微鏡本体部の製作を平成27年度に実施することになったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額はハイブリッド顕微鏡の本体部の製作に使用する。
|