2014 Fiscal Year Research-status Report
大規模線形方程式の数値解法のための合理的な前処理技法の研究
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25390145
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 祥司 東京大学, 情報基盤センター, 特任准教授 (70333482)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 数理工学 / 応用数学 / 解析・評価 / クリロフ部分空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究は初年度から継続して,「1.前処理系の数理面に対する考察を行い,我々の改善版の適用可能な範囲について検証」,および,「2.複数の評価方法を用いて,アルゴリズム求解特性(収束性や求解状況など)の分析・評価を実施」に取り組んだ.これらでは,前処理系の数理面に対して下記の項目A)~C)へと掘り下げた.A),B)の成果は,一旦,まとめの作業に入ったところで,前処理有無の両方の系に対する数理面についてあらためて考察を行った.特にA)については,定理や命題として提案するよう議論しているところである.また,B)の解析では,PBiCG(前処理付きBiCG)とPCGS(前処理付きCGS)のアルゴリズムにおける初期シャドウ残差ベクトルの設定が一見同じであっても,実は数理上は異なる前処理系を構成していることを確認し,平成26年度中に口頭発表した.ここでの解析は「3.様々な解法の核であるBiCG自体の改造やBiCG部分を他の解法に置き換えた前処理付きアルゴリズムの導出」の議論に深く関わる. A) 前処理無しの時点での解法の等価性に関する解析: CGS法はBiCG法を基にして導出され,数理的には両者は等価な関係である.この点に注目して,様々なPCGSアルゴリズムに対応するPBiCGを導出し,解析を行った.ここでは,左前処理系と呼ばれるPCGSアルゴリズムにも注目し,従来版PCGSと2種類の改善版PCGSに対し,これら4種類のPCGSを体系的に分析した. B) 残差多項式と初期残差ベクトルの前処理系に対する解析: 様々なKSP法を特徴付ける要素の一つでもある,アルゴリズム中の残差ベクトルと初期残差ベクトルなどの構造にも注目し,その前処理系の構造について解析した.これにより,従来版の求解特性についても分析した. C) 様々な数値実験から得られる求解性能データに対する分析と評価(改善効果の検証): 上述のA),B)を実施しながら,その検証として当項目を実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記載した「1.前処理系の数理面に対する考察を行い,我々の改善版の適用可能な範囲について検証」,「2.複数の評価方法を用いて,アルゴリズム求解特性(収束性や求解状況など)の分析・評価を実施」,および,「3.様々な解法の核であるBiCG自体の改造やBiCG部分を他の解法に置き換えた前処理付きアルゴリズムの導出」の3項目は当初の計画どおりの進捗である.これらに対する具体的な研究項目A)~C)をとおし,特にB)については,まとめ作業の段階で新たな観点の議論に発展したため,現在,その議論を掘り下げているが,途中経過として平成26年度の学会にて口頭発表した.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き「1.前処理系の数理面に対する考察を行い,我々の改善版の適用可能な範囲について検証し,このような解析結果の応用として簡易実装版も開発する」を実施しながら,「3.様々な解法の核であるBiCG自体の改造やBiCG部分を他の解法に置き換えた前処理付きアルゴリズムの導出」へと発展させるよう,アルゴリズムの解析と数値実験による性能評価を実施する. また,上記1,3の各々の研究に対し,「2.アルゴリズム求解特性(収束性や求解状況など)の分析・評価方法の開発」の検討も進める.
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