2015 Fiscal Year Research-status Report
生物機能形態を範とする柔剛混在型スマート材料の数理設計
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25390147
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
島 弘幸 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (40312392)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生物模倣 / 生物規範工学 / 複合材料 / プラントミメティクス / 座屈 / カーボンナノコイル / ナノ構造物性 / 分子動力学計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の主な研究実績は以下の三点である。 1. 植物が自然淘汰の過程で獲得した「機能形態」の科学的起源を探る「植物模倣科学/技術」において、一定の成果を挙げることができた。具体的には、野生の竹が示す特異な中空円筒構造に注目し、竹の節間板と竹稈内部を軸方向に貫く繊維(維管束鞘)がどのような機能をもつかを、構造力学・植物生理学の両視点から解明した。その結果、竹は横風等の外力による変形・座屈を防ぐべく、上下に隣り合う節同士の間隔を自律的に最適化していることを初めて定量的に検証することができた。さらに、竹断面で観測される竹繊維の傾斜分布が、竹稈全体の曲げ剛性を著しく高めることを理論的に示すことができた。 2. らせん構造を示す特異なナノ材料である炭素ナノコイルについて、その力学特性と電気伝導特性を理論・実験の両面から精査し、らせん構造に由来する幾何物性相関の度合いを考察した。その結果、炭素ナノコイルの電気抵抗率が、コイルのらせんピッチ・コイル径などの幾何学的特徴量に依存して系統的に変化する点、およびその温度依存性が非晶質系で広く観測されるMott-Davis則によく従うことがわかった。 3. 多層カーボンナノチューブに高静水圧または軸圧縮力を加えた際の座屈挙動を、おもに分子動力学シミュレーションを用いて調べた。その結果、マクロな円筒シェル模型とは異なる多数の不安定モードが内在し、その起源がナノスケール特有の離散的な分子構造に由来すること、およびその変形挙動が金属半導体転移を示す兆候を見出した。 以上の成果はいずれも、海外の学術専門誌(査読付)に原著論文として公表済である。特に竹の構造に関する成果は、同誌における注目論文(Editor's Suggestion)として選出・紹介された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、自然界の様々な階層で観測される機能形態に注目して、新たな科学概念および先進的な材料設計を図ることが目的である。この目的に照らして現在までの進捗状況を判断すると、竹稈に代表される自然由来の機能性材料から、炭素ナノコイルという人工ナノ材料に至るまで、奇異な形態・構造を有する様々な材料に対してその機能構造の科学的起源と技術応用を洞察・提案することができた。それらの成果は、海外の学術専門誌に10本の原著論文を掲載することができたほか、国際会議ならびに全国規模の研究会において7回の招待講演を行うことができた。特に植物の機能形態に関する成果は、当初計画した研究課題を遂行する過程で発案した発展的なテーマであり、当該分野の一流学術に成果が掲載されたことから上記区分の評価が妥当と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度までに大幅な研究進展を遂げることの出来た「植物模倣科学」の研究課題をさらに推進する。具体的には、森林生態系で一般に成り立つといわれる「自己間引きの法則」に注目し、樹木の形態由来機能とフラクタル構造の視点から、同法則を理論的妥当性と技術応用可能性を精査する。ナノ構造物性のテーマにおいては、炭素ナノコイル材料の詳細な構造解析を行い、同材料の電気抵抗率の温度依存性とコイル内分子構造およびコイル形態との相関関係を定量的に明らかにする。その成果を基に、同材料のコイル形状を積極活用したナノデバイスの設計指針を提案する。これらの方策によって、柔剛混在型複合材料の物性探査・機能開発と素子デザインの一層の進展を図る。
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Causes of Carryover |
本年度の研究実施においては、前年度までに購入した備品と消耗品をそのまま利用することが可能だったため、新たな備品等は購入しなかった。また次年度には、本年度までに得られた理論推算結果を検証するための実験研究を予定しており、その実験に必要な各種の備品購入費に次年度使用額の一部を充てる計画である。さらに本年度までには当初想定しなかった画期的な成果が得られたため、その成果を国内外の研究者と相互交換して一層の研究充実を図るために、当初予定していなかった国際会議に参加する費用として次年度使用額の一部を充てる計画である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
長年使用している計算端末および関連周辺機器が頻繁に誤作動を示すため、同機器を新規に購入する。また、当該年度および次年度に得られる研究成果を国内外に広くアピールし、国際的な人的交流を促進するため、予算の一部を海外で開催される国際会議への出張旅費に充てる。
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[Presentation] Formation of crack patterns in desiccated starch slurries2016
Author(s)
Yuri Akiba, Jun Magome, Hiroshi Kobayashi, Morimasa Tanimoto, Hiroyuki Shima
Organizer
The 2016 World Congress on Advances in Civil, Environmental, and Materials Research (ACEM16)
Place of Presentation
International Convention Center Jeju (Jeju, Korea)
Year and Date
2016-08-28 – 2016-09-01
Int'l Joint Research
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