2014 Fiscal Year Research-status Report
不均質異方性大規模ボクセルモデル内低周波電磁界の数値計算法に関する研究
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25390153
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
濱田 昌司 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20246656)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 電磁界計算 / 誘導電流 / 異方性 / 導電率 / ボクセル / 不均質媒質 / 低周波 / 境界要素法 |
Outline of Annual Research Achievements |
人体詳細モデルや実規模電気機器モデルなどの、導電率・誘電率に不均質な異方性を有する大規模ボクセルモデル内の低周波電磁界の数値解析手法について、高精度・高速・大容量化を図り、計算法の高度化を目指してきた。平成26年度の主要な成果は以下の通り。 1 ボクセルモデル解析用の高速多重極法の近傍場計算につきFFTを用いた高速化に成功した。等方性組織からなる人体モデルでの表面電荷法の高速化率は最大数10%に留まったが、直方体モデルでの異方性を考慮したモーメント法による計算では、高速化率は通常のFMMによる計算の290%にまで改善された。また全域をFFTで計算する手法と比較して、メモリ使用量は28%となり、使用メモリ容量の削減に成功した。さらに全域をFFTで計算する手法と比較して、使用配列個別のサイズが大幅に小さくなったため、並列化の際の粒度を小さくすることが容易となり、コード並列化の柔軟性が大幅に向上した。 2 等方媒質を対象としたボクセルモデル解析についても計算の高速化を進め、パーソナルコンピュータ上で6千万境界要素・22億ボクセルの人体全身解剖モデル解析に関し、GPUの使用によって反復解法の収束に必要な演算時間を約20分にまで短縮した。その後、CPUを使用した計算コードの高速化を再度検討し、CPUの使用によって反復解法の収束に必要な演算時間を約60分にまで短縮した。また、人体解剖モデルを例として、解析可能な要素数は現行機材(PC)によってCPU版・GPU版ともに約1億と見積もられ、さらに今後新規に(1カードあたり12GBのメモリを有する)新鋭のGPUを使用できれば、PC1台で約2億になると見積もられた。 3 3次元FFT計算による相互作用計算を1次元FFTに置き換える手法についても検討し、計算可能であることを検証したが、速度性能の向上には結びつかなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1 提案の異方性解析用ボクセルモデル用モーメント法の計算速度・使用メモリの削減手法として、以下の整備に成功している。 (1) 異方性媒質解析用のボクセルモデル用モーメント法と、等方性媒質解析用のボクセルモデル用表面電荷法との併用を可能にできたので、異方性組織の空間領域を限定する事で、後者の高速・省メモリ性能が有効利用可能となっている。 (2) 高速多重極法の近傍場計算へのFFTの導入に成功したことから、異方性媒質解析用のボクセルモデル用モーメント法の計算速度向上と必要メモリ容量削減とに成功した。 (3) (1)(2)の整備においては、磁化や電気分極の基本式を元に、面要素の片側の物理量のみで成立する境界条件式(=片側境界条件式)を導入した。面の表裏で1組の片側境界条件式を用いることで、従来の表面電荷法の定式化も、新規の6面要素を用いるモーメント法の定式化も、両者の併用方法の整備も、一貫したスタイルで実現できた。片側境界条件式という考え方は、理論的にも実用的にもたいへん自然で有用なものであり、学術的にも高い価値を有すると考える。 2 拡散テンソル画像(DTI)から導電率テンソルを推定する手法については、Rullmannの方法が実用性が高いことは確認できたが、導電率テンソル推定精度そのものは十分に高いとは言い難い。一方、DTI撮像可能な0.3T MRI装置が、研究代表者の所属専攻に新規設置されたことから、DTIデータの取得は容易な状況となっている。 以上を総括すると、全体としては概ね順調な進展状況であると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
計算モデルの大規模化と計算速度・精度の向上については、引き続き多面的(要素性能・正則化法・前処理・反復解法・FMM・FFT・GPUなど)に方策を検討して性能改善に努める。 FMMの近傍場にFFTを導入する手法については、GPU計算コードも作成し、性能比較等を行う予定である。また、FFT実行と直接計算実行との切り替え判定をどの様に行うかについて更なる検討を行う。現在は、リーフセル内要素数が設定値を超えるかどうかに従って計算法を切り替えているが、設定値の自動選択などへの対応が望まれる。一方、FMMの遠方場計算にFFTを導入する手法が既知であり、これを導入することで、近傍場計算と遠方場計算の両方にFFTを導入したFMMの開発も予定している。ボクセルモデル用直接境界要素法コードの新規開発や、高周波対応コードの新規開発も、検討課題とする。 DTI画像からの不均質異方性導電率を有する頭部モデルの作成については、引き続きモデル作成法について検討し、特に人力操作部分の減少に努める。 等方媒質を取り扱うケースについては、ボクセル数でギガ個級、面要素数でサブギガ個級の実用モデル解析を実施(従来通りPC1台で)することを予定している。
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Research Products
(5 results)