2014 Fiscal Year Research-status Report
分子動力学計算を速く正確に安定に実行するための基盤技術の開発
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25390156
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福田 育夫 大阪大学, たんぱく質研究所, 招へい研究員(准教授) (40643185)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分子動力学 / 相互作用計算 / 力学系 / 運動方程式 / 数値積分 / サンプリング / 数値計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
分子動力学(MD)計算をより速く実現するためには、対象とする物理系のエネルギー関数の極小点等に由来した、相空間における軌道のトラップから、系の時間発展を開放しつつ,かつ系の統計力学的記述を可能にする手法を構築することが必要である。この実現のために、本研究において、数値積分が容易である等の柔軟性に富む拡張アンサンブル手法の構築を行った。拡張変数を含む全系を良く記述するための数学的条件を明らかにし、かつ実用性に富むパラメタ設定法を構成した。低次元系での厳密性を重視した検証及び水中蛋白質系での実用性を重視した検証を行い、本方法が十分な性能を有していることを確認した。 数値積分法については、現在までに得られた知見を下に、上記拡張アンサンブル法が正確にかつ安定に積分できるような1ステップ写像を構成した。また、特に非平衡系のシミュレーションを念頭に置いた初期条件の生成法についても留意し、速やかに安定な実行ができるような方法を構築した。そして、それらを生体分子系にて確認した。 MD計算で、約9割以上の計算コストを必要とするのが長距離相互作用計算である。従って、MD計算の低コスト化のためには,単位時間辺りの長距離相互作用の計算回数を削減することに加え、1回の計算自体の精度を保ち、かつ計算コストを下げることが有効である。このため、代表者らが既に開発したzero-dipole summation 法をさらに高精度化したzero-multipole (ZM) summation 法を構築して、その精度検証を行った。特に、生体分子系で必須の水分子系に対し、様々な物理量を測定して、十分な精度を有する事を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
拡張アンサンブル法については、温度分布を任意に設定できる常微分方程式を定義し、温度分布のバリエーション、エルゴード性、分布の収束性等について調べた。その際、確率空間の実現及び長時間平均に関するいくつかの概念整理と概念の拡張について留意した。また、その過程で、積分評価不要の新しい再重法公式を得るとともに、方法全体のさらなる理論的拡張性に気が付き、サンプリング問題以外への応用についても十分有用である可能性があることが明らかになりつつある。数値積分法については、これまでの考察が役に立ち、上記拡張アンサンブル法に有用に利用することができた。しかし一方で、より一般的で高性能な方法の構築も重要である。ZM法に関しては、ベルリン自由大学の研究者との共同研究が始まり、数値検証を加速することができた。また、イオン系及び水系でのパラメタ依存性の詳細検討及び、DNA・蛋白質複合体の系への適用を通し、その有用性を確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
拡張アンサンブル法の研究を自由度数の大きい蛋白質・水系に適用しながら、その理解をより深めつつ、多角的に発展させていく。数値積分法については、系の保測性保存に加えさらなる理論的可能性についての検討を加えていく。ZM法については、他のnon-Ewald法との関連についてより深い理解が得られつつあり、これを基点にさらなる発展を目指したい。
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Causes of Carryover |
出張の予定を変更したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
旅費として計上する。
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Research Products
(7 results)