2013 Fiscal Year Research-status Report
時間依存密度汎関数法による発光材料解析技術の開発とその応用
Project/Area Number |
25390158
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
善甫 康成 法政大学, 情報科学部, 教授 (60557859)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
狩野 覚 法政大学, 情報科学部, 教授 (30107700)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 大規模並列化 / MPI-OpenMPハイブリッド並列 / MPI通信の隠蔽 / 高分子有機LED材料 |
Research Abstract |
実空間・実時間での時間依存密度汎関数法の能力を最大限に引き出すことを目的に、並列化効率の向上を行った。ベースとなるプログラムはMPIによる空間分割に基づく並列化である。当初のコードの改良は小規模なマシンにより実効性を確認し、大規模並列計算は「京」により32×4×4のMPI分割およびOpenMPにより512ノード(4096コア)まで行うことが可能となった。 並列化の実施にあたり採用した解析対象は、典型的な高分子有機LED材料であるフルオレン(FL)一本鎖モデルである。並列化の効率向上のために行った手順と内容は次の通りである。まずMPIのみの並列化をOpenMPとMPIのハイブリッド並列化に変更した。この並列化と並行してホットスポットの特定を行い、時間発展部のハミルトニアンと波動関数の積を作る箇所であることを確認し、ここに並列化のための改良を集中した。OpenMPばかりでなく自動並列化も併用すること、3次元的な分割による方向性を考慮したMPIのマッピング指定、配列のゼロクリアの除去により、29%の実行時間の削減ができた。さらにMPI通信の隠蔽方法の改良および配列コピーの削減と効率化により、実行時間を計38%削減させることに成功した。 実際この並列化によりFL40量体の解析が可能となった。我々がこれまで実施したことがなかった30nmを超えるサイズの直鎖状FL 高分子モデルにおける第一原理吸収スペクトル計算が、初めて可能となった。高分子モデルに含まれるFLの分子の数を2、10、20、40 量体と増やすことで高分子鎖を長くした時の吸収スペクトルを計算した結果、最も長波長側の吸収ピークの位置は、鎖長が伸びるにつれて長波長シフトするが、10 量体以上でほぼ同じピーク波長を示す結果を得た。これは高分子鎖のモデル化に有用な知見と考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H25年度の計画は小規模なサイズでアイデアを試すと同時に大型機での並列化を実施することであり、具体的計画として次の3つの項目を挙げていた。「1.基本構造設計およびプログラム仕様決定」、「2.基本プログラム開発および可視化のための設備の設置と進捗に合わせた実証」、および「3.基本的なスピン軌道相互作用の試行的実装と課題の抽出」である。これらの進捗は以下の通りである. 項目1については高度並列化と高効率化が計画以上に進んだが、効率的な時間発展の手法を高並列化が進んだプログラム上で確認するには至っておらず、小規模なプログラム上での確認にとどまった。項目2については基本プログラム開発および可視化のための設備の設置は順調に進んでいる。項目3については小規模な試験的プログラム上で基本的なスピン軌道相互作用の試行的実装を行うことができた。また研究協力者の協力により実測結果との比較も可能となった点が計画より進んでいる。これにより課題の抽出も行い今後の改良の方向性も明確となった。 以上の進捗状況により達成度を区分(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度に確認された手法および設計方針がある程度確定しており、それに基づき大型機での実装を行う。特に、高度並列化と高効率化は計画以上に進んでいるので、さらにこれを進めると同時に、同プログラム上で効率的な時間発展の手法等、抽出された課題の解決に努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた理由は、一部プログラム開発の外注を行う予定であったが、設計方針等の確定が遅れ、当該年度中での発注に至らなかったためである。 課題の研究推進のため計画に沿ってプログラム開発に関する外注を行う。これにより研究の遂行を図り、次年度使用額が発生した分について解消する。
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