2015 Fiscal Year Research-status Report
導体のエッジ特性を考慮した超高精度三次元電磁波解析法の開発
Project/Area Number |
25390159
|
Research Institution | Numazu National College of Technology |
Principal Investigator |
芹澤 弘秀 沼津工業高等専門学校, 制御情報工学科, 教授 (70226687)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 厳密解 / 方形開口 / 電磁波回折 / 電磁波漏洩 / 透過係数 / 導波管モード / 開口分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
板厚を考慮した完全導体遮蔽板内の方形開口(ただし周囲の媒質を真空と仮定)の研究については、様々な構造パラメータに対して解の収束性を調査・検討し、これまで未解明であった板厚が0に近づくときのエッジ近傍の界の振舞いを明らかにした。特に、少ない項数で高精度な数値解を得るための端点条件に関する新たな知見を得た。また、開口近傍の電力流(ポインティングベクトル)の計算コードを開発し、ベクトルプロットの方法によって開口前部と開口内部(導波管部)のエネルギーの流れを視覚化した。開口寸法(ただし半波長以下の場合のみ)、板厚、そして開口アスペクト比を変化させたときの流れの違いを調べ、特にエネルギー透過が大きい場合と小さい場合の現象の差異について詳しく調べた。その結果、大きなエネルギー透過はエッジ特性による界強度の増加と周囲のエネルギーの引き込みによって生じること、エネルギー透過が少ない場合はエネルギーの引き込み後の反射が原因であることを示した。開口内部の透過電力と全放射電力のが完全に一致したことから、計算式と計算コードの妥当性も確認できた。類似形状の音響波の問題との比較によって電磁波透過問題の特徴についても明らかにした。 誘電体を考慮した方形開口(板厚を無視)とフランジ付き方形導波管の研究については、計算式の再確認を行い計算コードの修正を行った(解の収束性と放射特性を評価するための準備を行った)。 さらに、導波管アンテナの結合係数や複雑な開口形状による回折界を厳密に求めるための基礎となる二つの方形開口(二枚の方形状金属平板の補対構造)の結合問題の厳密解を導出し、物理量の計算コードを開発するために必要となる新たな二重無限積分を示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
板厚を考慮した方形開口による電磁波透過に関する研究において、電力流の計算コード開発とベクトルプロットの表示方法に予想以上の時間を費やしたことと開口寸法が半波長以上の場合に導波管内部の透過電力と全放射電力が一致しない不具合が発生したこと(その原因究明に多くの時間を費やしてしまったこと)が、当初の計画よりも遅れてしまった理由である。また、厚みを無視した方形開口およびフランジ付方形導波管からの電磁波放射の問題については再計算(確認も含む)で、そして二つの方形開口(二枚の方形状金属平板の補対構造)の結合問題の厳密解については連立方程式の導出(Jacobiの多項式を基底とする内積空間への投影)で多くの時間を要したことも遅れの理由となっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
完全導体遮蔽板の板厚を考慮した方形開口(ただし媒質を真空と仮定)の研究については、開口寸法が半波長以上の場合に発生した不具合(導波管内部の透過電力と全放射電力の不一致)を早急に解決し、大きな開口に対する電力流の計算(エネルギーの流れの可視化)を行って既に明らかとなっている特定の板厚での透過エネルギーの急激な増加のメカニズムについて考察を行う。さらに、様々な開口寸法と構造パラメータに対して透過電力を予測するため簡潔な表示式の導出を試みる。 誘電体を考慮した方形開口(板厚を無視)とフランジ付き方形導波管の研究についても、電力流の計算コードの開発を積極的に行い、ベクトルプロットによってエネルギーの流れを視覚化し、エッジ等の影響について考察を行う。 二つの方形開口の結合問題については、物理量の計算コードを開発するために必要となる二重無限積分の計算アルゴリズムを検討する。
|
Causes of Carryover |
平成27年度は学会での研究成果の発表を積極的に行ったが、会場が東京(日帰り2件)、仙台(1泊1件)と比較的近い場所であったため旅費の使用が少なくて済んだこと、予定していた査読付き論文誌への論文投稿が理論式の再確認とデータの再収集の関係で年度内に間に合わなかったこと、さらに、国際会議の発表(アクセプト済み)が平成28年度にずれ込んだことなどの理由が、次年度使用額が発生した大きな理由となっている(研究に関する消耗品などを別予算で購入したことも理由の一つとなっている)。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、国際会議や国内での学会発表を積極的に行う予定である(既にオーストラリアでの学会発表が決定している)。また、十分なデータ収集と整理が間に合わず遅れ気味であった査読付き論文誌への論文投稿も年内の早い時期に行う予定である。厚い遮蔽板内の開口(半波長以上の開口寸法)による電磁波透過に関する研究では計算コードの不具合の問題を解決するために汎用的電磁界解析ソフトの購入を検討している。
|