2015 Fiscal Year Research-status Report
数論的な多様体のL関数とモチーフ的コホモロジーおよび円分体論への応用
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25400007
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
大坪 紀之 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60332566)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | L関数 / レギュレーター / 超幾何関数 / フェルマー多様体 / 周期予想 / ヤコビ和 |
Outline of Annual Research Achievements |
数論的なモチーフのレギュレーターは、L関数の特殊値と関係する重要な幾何学的な不変量である。しかし、それが具体的に計算、表示できる例は極めて少ない。朝倉政典氏(北大)との共同研究[2]において、ある種の曲面に対してそのレギュレーターが一般超幾何関数の特殊値を用いて記述できることを示したが、今年度は[3]においてそれをより一般の多様体の場合に拡張した。その過程で、Gross-Deligneによる周期予想もそれらの場合に証明した。このように、アーベル体に虚数乗法を持つモチーフの周期、よって対応するL関数の特殊値が、ガンマ関数という特殊関数の値で書けることは古くから観察されている。一方、レギュレーターや対応するL関数の特殊値が超幾何関数の値で書けるというのは新しく、重要な視点であると期待される。一方、一般超幾何関数の特殊値の研究にも新たな視点を与えることができ、朝倉氏、寺杣友秀氏(東大)との共同研究[4]では、そのような特殊値がいつ代数的数のlogで書けるかという考察を行った。またフェルマー塔のホモロジー群の構造を再考察し、それが完備群環上の加群として自由であることを証明した。その応用として、アンダーソン・伊原理論に表れるヤコビ和を補完する測度の別構成を行った。以上は論文[1]として発表した。 [1] N. Otsubo, Homology of the Fermat tower and universal measures for Jacobi sums, to appear in Canad. Math. Bull. [2] M. Asakura and N. Otsubo, CM periods, CM regulators and hypergeometric functions, I, preprint, arXiv:1503.07962. [3] M. Asakura and N. Otsubo, CM periods, CM regulators and hypergeometric functions, II, preprint, arXiv:1503.98894. [4] M. Asakura, N. Otsubo and T. Terasoma, An algebro-geometric study of the unit arguments 3F2(1,1,q;a,b;1),I, preprint, arXiv:1603.04558.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
レギュレーターと超幾何関数との関係の研究は、朝倉政典氏および寺杣友秀氏との共同研究により、予期していたよりも大きな展開を見せており、計画以上に進展していると言える。また、過去の研究の見直しにより、フェルマー塔のホモロジー群の構造とその応用についても新たな結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
朝倉、寺杣両氏との共同研究を引き続き行い、虚数乗法を持つ場合のレギュレーターと一般超幾何関数の関係を引き続き研究する。一方、円分体のヘッケL関数の特殊値と一般超幾何関数との関係、またそれらのp進的な類似物についての研究について、最近知られてきたいくつかの結果を一般化する方向で研究を進めたい。さらに、ヤコビ和のp進的な性質とベルヌイ数や円分体の類数との関係について、引き続き研究を行う。
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Causes of Carryover |
サバティカル研修中であった前年度からの繰り越しが多かったため、今年度は研究集会の会場費など当初の計画より増えた支出もあったが、少し剰余額が出た。有効に使用するために次年度に繰り越すことにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の計画通りに研究を進めるために必要な、旅費などに対して計画的に使用する。
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Research Products
(6 results)