2016 Fiscal Year Research-status Report
数論的な多様体のL関数とモチーフ的コホモロジーおよび円分体論への応用
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25400007
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
大坪 紀之 千葉大学, 大学院理学研究科, 准教授 (60332566)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | レギュレーター / 周期 / 超幾何関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究では、数論的な多様体のL関数の特殊値と、それを記述すると予想されている周期やレギュレーターという幾何的な不変量を、一般超幾何関数を用いて研究する。そしてGross-Deligneの周期予想やL関数の特殊値に関するBeilinson予想などに応用するというのが研究の目的である。 2014年から始めた朝倉政典氏(北大)との共同研究では、我々が定義した「超幾何ファイブレーション」というクラスの代数多様体の族から定まるモチーフの周期、およびレギュレーターを研究している。以前の研究 [1] [2] では、おもにモチーフが虚数乗法をもつ場合に、レギュレーターを超幾何関数の1での特殊値で記述していた。今年度の研究ではその「関数版」、つまり、変数をもつ超幾何ファイブレーションのレギュレーターを、同じ変数を持つ超幾何関数そのもので記述するという研究を行った。この場合、1以外での値は虚数乗法をもつとは限らないモチーフのレギュレーターになる。 またモチーフの拡大が代数的サイクルから来る場合、レギュレーターは代数体の古典的な単数規準で表すことができる。結果として、超幾何関数の特殊値を代数的数のlogで表す公式(朝倉氏、寺杣友秀氏との共同研究)、及びその関数版(朝倉氏との共同研究)が得られた。以上の結果については研究集会等で発表し、論文を準備中である。 [1] M. Asakura and N. Otsubo, CM periods, CM regulators and hypergeometric functions, I, Canad. J. Math., Online First. [2] M. Asakura and N. Otsubo, CM periods, CM regulators and hypergeometric functions, II, submitted.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
朝倉氏との共同研究は概ね予定通り進展しており、第一論文は学術誌に受理された。第二論文も投稿し、それに続く論文も準備中である。氏との継続的な議論により、あらたな展望も得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度は研究集会「Regulators in Niseko 2017」をオーガナイズし、レギュレーターやそれに関係する数論幾何学の諸問題について、参加者らと討論を行い、最新の知見を得るとともに、本研究の推進に役立てる。また、朝倉政典氏(北大)および寺杣友秀氏(東大)とのこれまでの共同研究を継続して行う。さらに、新たに始めたパリJussieu数学研究所のBruno Kahn氏との共同研究を継続し、九州大学の小林真一氏とのp進レギュレーターに関する共同研究を行う。また研究集会「Motives in Tokyo 2018 on the occasion of Shuji Saito's 60th birthday」にもオーガナイザーの一人として参加し、代数的サイクルとその周辺の数論幾何学の諸問題について、参加者らと討論を行う。
具体的な研究内容としては、超幾何関数の特殊値を代数的数のlogで表す公式に関して、朝倉氏、寺杣氏との共同研究を完成させる。また、フェルマー多様体のp進レギュレーターをColeman積分を用いて計算し、p進超幾何関数と関係づける(小林氏との共同研究)。一方、楕円曲線のL関数の特殊値を超幾何関数の特殊値で記述する結果(Rogers-Zudilin-伊東)らの結果の一般化を行う。さらに、一般の虚数情報を持つモチーフの周期について、モチーフ的な観点からの研究を行う(Kahn氏との共同研究)。
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Causes of Carryover |
前年度の未使用分の繰越があったこと、および年度末近くに大学予算の追加配分があり、そちらを優先的に使用したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の計画通りに研究を進めるため、研究集会に参加するための旅費や書籍の購入などに、計画的かつ有効に使用する。
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Research Products
(8 results)