2014 Fiscal Year Research-status Report
ケースリー曲面上の自己同型に関する研究の曲線論への応用
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25400039
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渡邉 健太 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (70582683)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ACM ベクトル束 / Lazarsfeld-Mukai 束 / K3 曲面 / 二重被覆 / Weierstrass 半群 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は前年度に変更した研究計画に基づいて研究を遂行した。まず、K3 曲面上の与えられた偏極に関するベクトル束の算術的コーエン・マコーレー (ACM) 性と Gieseker 安定性及び、slope 安定性の両立に関する研究を行った。本研究では K3 曲面上の因子として豊富な種数 2 曲線の 3 倍で定まる偏極に関する ACM 直線束の Hilbert 多項式による特徴づけを与えた。更に、それを用いて generic な次数 1 DelPezzo 曲面の二重被覆として得られる K3 曲面と DelPezzo 曲面の反標準因子の引き戻しから同様にして決まる偏極に関して高い階数の Gieseker 半安定な ACM 束の族を各階数に対して構成した。 一方、K3 曲面上の因子として非常に豊富な非特異曲線とその上の基点を持たないペンシルから決まる階数 2 Lazarsfeld-Mukai 束(以下 LM 束と書く) の一次 Chern 類に関する slope 安定性に関する研究も行った。本研究ではその様な階数 2 ベクトル束がその一次 Chern 類 c_1 に関して ACM である事に着目して、半安定でない階数 2 の LM 束の maximal destabilizing sheaf が c_1 に関する(大域切断をもつ)ACM 直線束を含む事を示し、階数 2 の LM 束が c_1-slope 半安定になる為の十分条件を与えた。
並行して、平面曲線の二重被覆の ramification 点における Weierstrass 半群についての研究を米田氏と共同で行った。本研究では、Weierstrass 半群を考える点に対応する branch 点が ordinary な Weierstrass 点の場合に曲線の二重被覆が double sextic に延びる条件を考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
K3 曲面上の安定 ACM 束の研究に関しては当初の予定よりも多くの成果及び、新しい知見が得られた。特に、ACM と(半)安定性を両立するベクトル束であって Ulrich でない面白い例を構成できた事や、K3 曲面上の非特異曲線の Brill-Noether 理論の観点から階数 2 の Lazarsfeld-Mukai 束の slope 安定性を ACM 直線束を用いて特徴づける事ができたことが大きい。しかしながら、Weierstrass 半群の研究については曲線の二重被覆の Weierstrass 半群を考える点に対応する branch 点における接線の条件が半群の計算に及ぼす影響が想像以上に複雑で思ったように成果が上がらなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において得られた知見から、交付内定時に予定していた研究計画を変更する。まず、K3 曲面上の LM 束の slope 安定性に関する研究を行う。これまでの研究から、階数 2 の LM 束は一次 Chern 類 c_1 に関して slope 半安定でないならば、その maximal destabilizing sheaf は c_1 に関して ACM である事が予想される。そこで、本研究ではこの事を検証したうえで、階数 2 の LM 束の c_1-slope 安定性を検証する。その後、それを踏まえたうえで、c_1 に関して ACM である高い階数の LM 束の maximal destabilizing sheaf として現れる階数 2 ベクトル束の特徴づけを行う事で、その slope 安定性についても議論する。また、これにより K3 曲面上の非特異曲線の Clifford 指数に寄与する直線束の ambient space である K3 曲面への拡張に関する Donagi-Morrison の予想へのアプローチも考えてみたい。
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Causes of Carryover |
予定していた消耗品の価格や旅費に若干の誤差が生じた為、わずかな差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまで通り研究費の使用計画に大幅な変更は無いので、次年度も当該差額を含めて当初の使用計画に基づき研究を遂行する。
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Research Products
(5 results)