2014 Fiscal Year Research-status Report
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25400053
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
楫 元 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70194727)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ガウス写像 / 射影多様体 / 双対多様体 / ヴェロネーゼ多様体 / ブールの公式 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、射影多様体上のベクトル束に付随するグラスマン束の次数について研究を進めた。グラスマン束とは、ベクトル束から自然に定まりファイバーがグラスマン多様体となっているファイバー束である。自然で基本的な射影多様体であるにも関わらず、かつてその次数公式は知られていなかった。 一般の体上で定義された非特異準射影多様体X上のベクトル束Eに付随するグラスマン束をGと記す。昨年度の研究成果から、G上のプリュカー類のベキのXへのpush-forwardに関する公式を得た。詳しくは、Eのセグレ類で記述される閉じたものについて、以下の二つを得ている:(A)セグレ類の単項式による公式;(B)セグレ類のシューア多項式による公式。今年度は証明の改良と公式の一般化を目指して、寺杣友秀氏(東大数理)との共同研究を継続した。 公式(A)については証明の改良によりさらに一般化できると思われる。また、(B)については非常に短く簡潔な証明があることが解った。 上記研究と並行して、本来の目的である「射影多様体の一般(higher)ガウス写像の研究」も行った。昨年度の成果として、ヴェロネーゼ曲線の場合にその像の次数公式が得られていた。その一般化として今年度は、グラスマン束の次数公式を用いてさらに、一般のヴェロネーゼ多様体の場合の公式(ただし、基礎体の標数が零の場合)を得た。これは、「ブールの公式」として知られるヴェロネーゼ多様体の双対多様体に関する次数公式の一般化を与える。
以上の研究成果については、研究集会「代数多様体とその周辺」(琉球大学理学部、2014年9月29日)、「Mini-conference on Algebraic Geometry」(台湾大学、2015年3月6日)、および、研究集会「野田代数幾何学シンポジウム」(東京理科大学理工学部、2015年3月17日)において招待講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
グラスマン束の次数公式とその証明の改良、および、一般(higher)ガウス写像に関する研究を継続している。これは当初の研究計画調書に明記した研究ではないが、研究課題「正標数の射影代数幾何」への応用も見込まれる。さらに「正標数の射影代数幾何」の視点のみならず、広く一般標数の射影代数幾何の視点から考えても、普遍的かつ重要な研究である。よって昨年度同様に、研究計画を変更をして上記研究を継続している。そのため、研究計画調書に挙げた内容自体については達成度は低いと云わざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
主に以下の二つがある: (1)グラスマン束の次数に関する公式のひとつ-「研究実績の概要」記載の公式(A)-について、その証明を改良すること、そしてそれによる公式(A)の一般化を目指す。これについては、寺杣友秀氏(東大数理)との共同研究を継続する予定である。 (2)一方、射影多様体の一般(higher)ガウス写像の研究、とくにその像の研究として、先行研究で知られている双対多様体の次数公式の一般ガウス写像の場合への一般化、基本的な射影多様体に関する次数公式の導出を目指し、そして、ヴェロネーゼ多様体に関して基礎体が一般標数の場合に関する調査を続行する。
いずれについても、代数幾何学のみならず広く、表現論、シューバート解析、微分幾何学にも関わると思われるので、それらのさまざまな分野の専門家との議論と研究打ち合わせが重要となる。機会を見つけては代数幾何学を含む上記分野などでの研究集会で自分の成果を発表し、また、他分野の専門家との議論や研究打ち合わせを精力的に行って行きたい。
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Causes of Carryover |
2014年度の前半まで、2013年度からの学内雑務(基幹理工学部数学科主任と大学院基幹理工学研究科数学応用数理専攻主任の兼務)のため、研究打ち合わせや研究集会への参加が思い通りには出来なかったことがあり、2013年度からの繰越額を消化しきれなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国内出張と海外出張に使用したい。「今後の研究の推進方策」に記載したとおり、代数幾何学、表現論、シューベルトカリキュラス、微分幾何学などの専門家との議論と研究打ち合わせがさらに重要となる。積極的に機会を見つけて代数幾何学を含む上記分野などの様々な研究集会において自分の成果を発表し、また、他分野の専門家との議論や研究打ち合わせを精力的に行ってゆきたい。
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