2014 Fiscal Year Research-status Report
モジュライ空間上のKZ方程式の基本解とリーマン・ヒルベルト問題
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25400054
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
上野 喜三雄 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70160190)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | KZ方程式 / 多重対数対数関数 / 多重ゼータ値 / Drinfeld associator / Riemann-Hilbert問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
モジュライ空間M_{o,n}上のKZ方程式とRiemann-Hilbert問題の研究について論文「Fundamental solutions of the Knizhnik-Zamolodchikov equation of one variable and the Riemann-Hilbert problem」を完成させ,現在論文誌に投稿して審査がされている.審査結果は,現在の段階では得られてないが,この論文の概要を述べることにする. 多重対数関数 Li_k(z) は,反転公式と呼ばれる接続関係式をみたしているが,この関係式を再帰的な加法型Riemann-Hilbert問題と認識することができて,これにより多重対数関数を特徴づけることができる.これを,より一般の多重対数関数(MPLと略す)Li_{k_1,..,k_r}(z) に拡張することができる.これは次のように説明できる.多重対数関数の反復積分表示を経由して,多重対数関数に2文字の語 w に対応させて Li(w;z) と表記しよう.このとき,MPLのみたす反転公式は,\sum_{uv=w}Li(\tau(u);1-z)Li(v;z)=\zeta(\reg(w)) という形をとる.ここで,\tauは語の順序反転と種類の入れ替え操作,\regは語の正則化操作を意味する.この関係式も再帰的な加法型Riemann-Hilbert問題と見なすことができて,これがMPLを特徴づける.1変数KZ方程式の基本解は,一般化された多重対数関数の母関数であり,その接続関係式はMPLの反転公式と同値である.したがって,その接続関係式は乗法型のRiemann-Hilbert問題になり,これによりKZ方程式の基本解を特徴付けることができるのである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の進展は予定より若干遅れていると言わざるをえない.その理由は,上で掲げた論文「Fundamental solutions of the Knizhnik-Zamolodchikov equation of one variable and the Riemann-Hilbert problem」の掲載が決まらないことである.計画では,さらに1変数KZ方程式の大域的接続問題のRiemann-Hilbert問題による特徴づけ,2変数KZ方程式の基本解の大域的接続問題とRiemann-Hilbert問題について考察する予定でいるが,これらの課題をモノドロミー保存変形と関連させて考えることが自然であることが最近分かってきた.これについては次の項目で詳細に説明したいと思う.
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Strategy for Future Research Activity |
多変数のKZ方程式とRiemann-Hilbert問題の関連性を考える上で,モノドロミー保存変形(monodromy preserving deformation,「MPD」 と略す.)を考えることは自然なことである.n変数のKZ方程式をnKZと記すことにする.変数はモジュライ空間M_{0,n}上の立方体座標,z_1,z_2,..,z_n である.z_1変数に関する方程式は,z_1=0,1,1/(z_2),1/(z_2z_3),...,1/(z_2...z_n), ∞ に確定特異点を持つ常微分方程式であり,nKZ系全体として,この常微分方程式(これを主方程式と呼ぶことにする)の一種のMPDと見なすことができる.実際,主方程式に対するMPDを定義することができる.これをnMPDと記すことにしよう.nMPDに対する変形方程式はSchlesinger型の非線型方程式であり,その意味で,Painleve方程式の一般化になっている.つぎのことが分かる:1)nMPDは適切な初期値を選ぶとz_2=z_3=...=z_n=0で正則な解をただ一つ持つ.2)その解において,z_2=z_3=..=z_n=0としたとき,nMPDは1変数KZ方程式すなわち1KZになる.3)nMPDに対する変形方程式は定数解を持つ.それに対応するnMPDはnKZに他ならない.ここで見たMPDは,2)から分かるように, 1KZに付随したMPDであり,その意味で特殊なものであるが,nKZを余次元2以上の部分多様体に制限することで,より一般のMPDを定義することも可能である.このように,KZ方程式の理論の背後,モノドロミー保存変形という非線型問題を見ることできる.今後は,Riemann-Hilbert問題の技法を用いて,MPDまで含めた理論を追求したいと考えている.
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