2014 Fiscal Year Research-status Report
正標数の3次元Calabi-Yau多様体とその周辺の研究
Project/Area Number |
25400056
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
高山 幸秀 立命館大学, 理工学部, 教授 (20247810)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 代数幾何学 / 正標数 / Calabi-Yau3次元多様体 / 小平型消滅定理 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の前半は、前年度に得られた研究結果の改良に力を注いだ。具体的には、van der Geerと桂利行による正標数Calabi-Yau3次元多様体に関する基本的性質を調べた2004年の論文と小田忠雄による1st de RhamコホモロジーとDieudonne加群に関する1969年の論文、および、Rudakov & ShavarevichのK3曲面における大域ベクトル場に関する有名な結果のde Rham-Wittコホモロジーを使った簡単な証明を与えた、O. Nygaard & W.Langによる1980年の論文を詳細に調査した結果、Picard群(Neron-Severi群)がp-torsionを持たないことと、正標数のCalabi-Yau多様体(3次元以上)が非自明な大域余ベクトル場を持たないことが同値であり、したがって、弱い意味でのH1-小平消滅定理が成り立つことを発見した。 年度の後半は、この結果をさらに発展させるべく、Picard群と基本群の関連に着目し、代数的基本群について、特にunirationalな代数多様体について、これまで知られている結果を集中的に調査した。しかしながら、論文として公表するに耐える成果は得られなかった。 また、前半にはドイツのマックスプランク研究所で開かれた、数論幾何学と代数幾何学に関する国際研究集会に参加し、特に、正標数の代数多様体を研究するための道具となる諸理論の最近の動向について調査を行った。年度の後半は、城崎代数幾何学シンポジウムや東大の数論幾何学と代数幾何学に関する国際シンポジウムなど、多くの研究集会に参加し、情報収集に努めた。特に、代数的基本群という視点から正標数のCalabi-Yau多様体を理解するという視点は、城崎シンポジウムでの講演を聞いていて思いついたものである。これが良い研究成果につながることを期待しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで、エタール、クリスタリン、de Rham-Wittといった、正標数の代数多様体を研究する道具としてのコホモロジー理論を学びながら、Calab-Yau多様体を研究してきたが、これらの理論の習熟に手間取ったことが理由としてあげられる。また、上記のコホモロジー理論のような数論幾何学の道具の応用だけでできることは限られているか、非常に難しいかのどちらかで、やはり具体例を中心とした、幾何学的な議論も深めていかないと、なかなか先に進めないことを痛感している。
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Strategy for Future Research Activity |
正標数のCalabi-Yau3次元多様体の興味深い具体例は、広門、伊藤、斎藤、Schroeer, van Straten & Cynk, Schoen, Ekedahlらによって報告されており、これらの研究成果について一通りのことは把握しているが、今後はこれらの具体例をもう一度詳細に検討し、代数的基本群やPicard群、大域的余ベクトル場の観点からの新しい発見をめざしたい。
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