2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25400065
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
塚田 和美 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (30163760)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江尻 典雄 名城大学, 理工学部, 教授 (80145656)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 四元数多様体 / 全複素部分多様体 / 複素グラスマン多様体 / ツイスター空間 |
Research Abstract |
四元数多様体及び四元数(擬)ケーラー多様体の複素部分多様体あるいは(擬)ケーラー部分多様体を対象とし、次のような課題を追求し、成果を得た。 1. 4次元球面内の曲面に関する共形幾何学についてのPeditらの理論を高次元化し、四元数射影空間の横断的複素部分多様体に関する四元数複素微分幾何学の基礎理論を構築する。この課題については、2つの成果が得られている。(1)横断的複素部分多様体の第2基本形式の(2,0) + (0,2)成分が四元数接続の選び方に依らないことを示し、新たな不変量を見出した。この不変量を用いて、特別なクラスの横断的複素部分多様体に対する特徴付けに成功した。(2) PeditらのS理論を、四元数射影空間の横断的複素部分多様体という枠組みで高次元化することに成功した。即ち、横断的複素部分多様体に対し四元数ベクトル空間の複素構造テンソルに値をもつ関数Sが定義されることを示した。さらにこの関数 S は、部分多様体の幾何学的性質を記述するのに有効であることを明らかにした。以上の結果は論文にまとめられる予定である。 2. 四元数ケーラー対称空間である複素グラスマン多様体に対し全複素部分多様体の構成、分類理論を発展させる。この課題についての主な成果は次のようなものである。 (1) 複素射影空間の射影余接束が複素グラスマン多様体のツイスター空間であることを示した。(2) この事実を応用し、複素射影空間の複素部分多様体から、複素グラスマン多様体の全複素部分多様体を構成する方法を明らかにした。(3) 特に等質であるものを構成、分類することに成功した。以上の結果を論文にまとめた。当該分野の専門雑誌に投稿する予定である。 上記の研究は、複素微分幾何と四元数微分幾何が相互作用する四元数複素微分幾何学と呼ばれる興味深い研究領域の発展に寄与するものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的、研究実施計画に沿って研究が進み、目標とした研究課題について一定の成果が得られたので、「おおむね順調に進展している。」と判断した。 具体的には、「四元数射影空間の横断的複素部分多様体に関する四元数複素微分幾何学の基礎理論の構築」という課題では、この部分多様体の幾何学的性質を解析するための不変量を見出した。「等質四元数多様体あるいは等質四元数(擬)ケーラー多様体の全複素部分多様体の構成分類理論の展開」という課題では、四元数ケーラー対称空間である複素グラスマン多様体についてその全複素部分多様体の構成、分類理論をほぼ満足の行く形で構築することができた。 これらの成果をもとに論文としてまとめられるところまで達成している
|
Strategy for Future Research Activity |
1.四元数射影空間の横断的複素部分多様体に関する四元数複素微分幾何学の基礎理論を構築する課題に関しては、平成25年度に得られた結果を踏まえ,次のような問題に重点的に取り組む:(1) 4次元球面内の曲面に対する Willmore汎関数に相当する汎関数を導入し,その変分問題の解となる部分多様体を研究する。(2) Baecklund 変換に相当する変換の理論,変形の理論を構築する。 (3) “四元数ベクトル空間の複素ラグランジュ錐の生成関数” についての研究分担者 江尻による理論を発展させ,四元数(擬)ケーラー多様体の横断的複素部分多様体の変換理論,変形理論の構築に応用できないか検討する。 2.等質四元数(擬)ケーラー多様体の全複素部分多様体の構成、分類理論を進展させる課題に関しては、平成25年度に研究された複素グラスマン多様体に続き、実グラスマン多様体を対象に研究を進める。そのツイスター空間及びその上の正則接触構造を具体的に記述することが鍵になると考えている。 3. 本研究をさらに進展させるため、本研究課題やより広く四元数複素微分幾何学に関する国内外の研究者による研究集会を開催し、研究交流を進めたいと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者である塚田が、学内機関であるセンターのセンター長に任ぜられ、着任初年度でもあり、国内外への出張がしにくく、直接訪問しての研究交流や研究発表がしにくかったこと。研究課題の内、Lie環の構造や表現に関わる計算との関係でパソコン購入を予定していたが、研究遂行の過程で課題へのアプローチの順番を入れ替え、当該研究方法については次年度に行うことにしたため、パソコンの購入については先延ばしした。以上のような理由で次年度使用額が生じた。 次年度当初にパソコンを購入し当該研究方法に着手する。また、25年度に得られた研究成果を発表する機会を増やし、並びに本研究をさらに進展させるため、本研究課題やより広く四元数複素微分幾何学に関する国内外の研究者による研究集会を開催し、研究交流を進めたいと考えている。以上のように研究交流、研究成果発表を行うため、旅費に多くの予算を充てる。
|