2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25400072
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
松澤 淳一 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (00212217)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堂寺 知成 近畿大学, 理工学部, 教授 (30217616)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 極小曲面 / ジャイロイド曲面 / 空間群 / 離散曲面 |
Outline of Annual Research Achievements |
異なる分子がつながってできる高分子の集団が自己組織化し共連続構造を成す際に、各成分の界面が周期的極小曲面を形成することがある。これらは、ソフトマターや多孔性物質など、ナノスケールの物質の構造に、高い対称性を持つ幾何構造として現れる。本研究課題「結晶の対称性と極小曲面に関する研究」の研究目的は、こうした極小曲面上に、分子配置として存在する双曲的アルキメデスタイリングの分類およびその総合的研究を数学および物理学の立場から行い、その構造を幾何学的、解析学的に特徴付けることである。 平成27年度の計画は、平成26年度に引き続き(1)シュワルツのプリミティブ曲面、ダイヤモンド曲面、ジャイロイド曲面を変形して得られる負の定曲率曲面上のアルキメデスタイリングおよび曲面の離散化、(2)(1)の曲面に対してのアルダー転移の研究、(3)共連続相の光学物性の研究、(4)ワークショップ「Schoen Geometry: The Gyroid」の開催、であった。 (1)については、Schwarzの研究を元にした新たな極小曲面上のタイリングについてさまざまな実験を行い、これまでにないタイリングの構成を試みた。この研究は計算機によるシミュレーションを元にしているが、現在の所、数式処理ソフトの限界があり、別の方法を探っているところである。(2)については、分担者によって、プリミティブ曲面およびダイヤモンド曲面上の剛体球のシミュレーションが行われ、そのアルダー相転移の観察による、負曲率曲面上の規則構造の分類が行われた。(3)については、結晶光学の立場から、曲面の幾何学的構造と微分方程式の関係に着目した研究に着手し、曲面の族の2重ファイブレーションの立場からの研究を行った。(4)については、ワークショップの主賓であるジャイロイド曲面の発見者Schoen氏の急病のため、残念ながら研究会は中止された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、昨年度に引き続きジャイロイド曲面の離散化と可積分系との関係を研究するため、研究概要にある内容の研究を行った。極小曲面上のタイリングの研究については、Schwarzの理論を応用した新しいタイリング構造の可能性が得られ、今後の研究に期待が持たれる。また、結晶光学の立場からの研究に着手できたことは、この研究課題に新たな視点を与えることになり、幾何学および解析学の観点からも興味深い結果が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究に引き続き新たなタイリングと極小曲面を構成する。極小曲面およびその上のタイリングの研究に関しては、数式処理上の困難に直面しているが、今年度購入した計算機を活用し、計算方法の新たな工夫を凝らす予定である。また、曲面の幾何学について、結晶光学の立場からの研究をさらに深め、ジャイロイド極小曲面の解析学の立場からの研究を推進する。また、準備が遅れているジャイロイド曲面についての教科書の執筆を行う。
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