2015 Fiscal Year Research-status Report
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25400077
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
足立 二郎 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (20374184)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 接触構造 / 過旋性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の大きな目的は,ラウンド手術の視点から接触トポロジーの統一理論を目指すことにある. 2015年度に行った研究では,前年度からさらに引き続き,おもに高次元への一般化について考察した.Bormanさん,Eliashbergさん,Murphyさん達によって高次元過旋性の概念が導入されたことはこの分野にとって大きな衝撃であり,私の研究にも少なからぬ影響があった.計画では新たな方面への一般化を探っていく予定であったが,もうしばらく高次元の考察を続けることとなった. 接触構造とは,奇数次元の多様体上の余次元1の部分接空間の分布で,ある意味で常にねじれているものである.それがねじれきった状態になると,ホモトピー原理がみたされるようになる.そのクラスが過旋と呼ばれる.3次元多様体上の接触構造に関しては知られた概念であったが,高次元に関しては2014年にその存在がアナウンスされた. 私は昨年度の研究で,高次元多様体上の接触構造をこの過旋の状態に変えるLutzねじりの高次元への一般化を構成していた.しかし,その構成にはコンフォーリエイションの接触構造への近似を使っており,得られる接触構造がはっきりしないという指摘があった.そのため,近似を調べて具体的な近似を得た. また,高次元の過旋の概念は幾何的な特徴付けがまだ定着おらず,いくつかの候補が提案されている.私の構成法の視点から新たな幾何的な特徴付けを得た.何人かの専門家たちと議論してその妥当性と私の構成法の今後の発展に手応えを感じている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
接触ラウンド手術という方法を使って,高次元や高階を含む接触構造の統一理論を作ることが本研究の目的である.高次元において,過旋性に関する重要な発展があったために高次元以外の方向への研究は遅れている.しかし,高次元への一般化の考察は非常に深まっており,それ以外の方向を向いたときに良い影響をもたらすことが期待できる.その意味で,この研究課題の達成に向け順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後とも,本研究の大きな目標である接触トポロジーの統一理論を目指して研究を進めて行きたい.高次元において接触ラウンド手術を用いた一般化されたLutzねじりという方法は,何か本質的なものを捉えているであろうことが強く期待される.それとともに更に違った方向への一般化にも舵を切っていきたい. 高次元の柔らかい接触トポロジーは非常に新しい分野であり,国内外の研究者と最新情報を交換しつつ研究を進めることが必要で不可避である. 更なる一般化には,それぞれの分野の専門家との議論が効果的と思われる. 既存の知識を吸収し,自分の視点からの考察と融合させながら研究を推し進めていきたい. 2015年度は講義等の重みが増し,研究面が少し圧迫を受ける感じになった.集中力をさらに高め研究と教育業務の双方を高い水準で遂行したい.
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Causes of Carryover |
使用中の計算機は10年以上使用しており,最近のOSには対応しきれなくなっていたので,新しい計算機の購入を予定していた.しかし,OSを軽いものに入れ替える事により使用に耐えるようになったので,購入を先送りすることにした. 海外の研究者との直接の打ち合わせのための渡航を計画していたが,渡航を先送りにすることにした.重要な人物が2名も来日し,国内で意義のある議論ができたからである. また,1回行った海外出張でも,手配をうまくして費用を抑えられたこともある.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
柔らかい高次元接触トポロジーは,非常に新しく急速に動いている分野であることもあり,専門家と直接に会って議論し情報を交換する必要がある.そのために旅費等として研究費を使いたい. また新たな方向への展開のためは,書籍等からの知識の吸収や各分野の専門家との議論が必要で,旅費とともに書籍費等も予定している. 論文作成や資料収集に計算機は欠くことが出来ない.今年度こそ,計算機の購入を予定している.
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