2016 Fiscal Year Research-status Report
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25400077
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
足立 二郎 北海道大学, 理学研究院, 非常勤講師 (20374184)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 接触構造 / 過旋性 / ラウンド手術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の大きな目的は,ラウンド手術の視点から接触トポロジーの統一理論を目指すことにある.2016年度に行った研究では,前年度からさらに引き続き,高次元への一般化において既存の方法との決定的な違いを明らかにする研究を行った.Bormanさん,Eliashbergさん,Murphyさんによる高次元での過旋性の概念の導入は,研究計画を変更するに値する大事件である.高階への一般化を考える前に,1階の接触構造でもラウンド手術の方法の有効性を見出せる方針が立ち,考察を続けることにした. 接触構造とは,奇数次元の多様体上の余次元1の部分接空間の分布で,ある意味で常にねじれているものである.それがねじれきった状態になると,ホモトピー原理がみたされるようになる.そのクラスが過旋と呼ばれる.3次元多様体上の接触構造に関しては知られた概念であったが,高次元に関しては2014年にその存在がアナウンスされた. 接触構造が「過旋ではない」ということと「シンプレクティック充填可能」ということは,かなり近いが実際には違いがあることが,3次元においては知られている.しかし高次元においては未だ違いは知られていない.これまでの研究で,私は接触構造を過旋に変えるLutzねじりの高次元版を得た.これを用いると高次元においてもその初めての例を構成できると思われる.そのためには,高次元の過旋性をうまく幾何学的に特徴づけることが必要である.昨年度の特徴づけとは別に新たな幾何学的な特徴づけを得た.これを使って上の例の構成の研究を推進中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
接触ラウンド手術の方法で,高次元や高階を含む接触構造の幾何学の統一理論を作ることが本研究の目的である.高次元における過旋性の概念が示されるという重要な事件があったため,本研究においも高次元多様体上の接触構造の研究に力を注いでいる.その他の一般化への展開が遅れているが,いま動いている高次元への考察は深まっている.その意味で全体的に考えると,この研究課題の達成に向け順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後とも,本研究の大きな目標である接触トポロジーの統一理論を目指して研究を進めて行きたい.私が導入した接触ラウンド手術の観点からの一般化されたLutzねじりという操作は,過旋性の特徴付けの観点からも本質的なものを捉えていると思える.まず,1階高次元の接触多様体において決定的な違いを与える結果を出し,高階への一般化を進めて行きたい. 高次元の接触トポロジーの柔軟性は,非常に最近に発展した分野で,国内外の専門家と最新情報を直接に交換しつつ研究を進めることが必要不可欠である.また高階への一般化は分野を越えた展開になっていくので,それぞれの分野の研究者と直接に議論し,自分の中で融合させるとともに,研究者同士を結びつけるのも重要だと感じている. 研究時間の確保にはなかなか難しいものがあるが,集中力をさらに高めることにより高い水準で研究を遂行したい.
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Causes of Carryover |
10年以上使用中の計算機が,OSを軽くしたことにより,思いのほか快調に働いている.新しい計算機の購入を急ぐ必要はないと判断し,延期した. 海外の研究者と直接に議論する予定であったが,他の業務に忙殺され双方の予定を調整しきれなかった.また2017年度はじめにアメリカ合衆国に相手方の予算で招待され,多くの研究者と直接に議論できることになったため,2016年度中に無理に渡航するより先の機会を考える方が効果的であると判断した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
非常に新しく急速に動いている分野に研究が関連しているので,国内外の専門家たちと直接に議論し情報を交換することが必要である.そのための旅費として研究費を使用したい. また,2017年度にポーランドで行われる特異点論に関わる研究集会の企画に参加している.本研究に関係しそうな多くの研究者と直接に議論できる良い機会である.この集会に関することでの使用も予定している. 論文作成や資料収集のために,計算機の購入を予定している.
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