2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25400091
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
小林 毅 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (00186751)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 3次元多様体 / 結び目 / Heegaard分解 / 橋分解 / 折り紙 |
Research Abstract |
本研究においては「1. 三次元多様体論、特にHeegaard理論における手法の精密化・展開」、と「2. 低次元トポロジーにおいてこれまでに得られている様々な成果や定式化をより広い幾何的問題に適用」という二つの目的を設定している。これらに関して次のような成果が得られた。 1.Heegaard分解の距離、3次元多様体の絡み目の橋分解の距離に関して、井戸絢子、張娟姫との共同研究により任意の自然数nに対して、距離が丁度nとなるようなHeegaard分解、3次元多様体の絡み目の橋分解が存在することを示した。これらの結果については専門誌Algebraic and Geometric Topology及びTopology and its Applicationsに掲載予定である。また、市原一裕、Yo’av Rieckと共同で一次元球面上の曲面バンドルのファイバーがstrongly acylindricalとなるための条件を与えた。この結果については論文が専門誌Proc.Amer.Math.Soc.に掲載される予定である。その他次の2つの研究を行った:(1)Yo'av Rieckと共同で三次元多様体内の結び目のトンネル数の増大度に関する研究を行った。結果として小さな結び目のトンネル数の増大度が一般化された橋数を用いて表示できることが示せたが、現在この結果を論文にまとめている。(2)高尾和人、小沢誠、張娟姫と共同でいくらでも橋数の高いunstabilized橋分解をもつ結び目が存在することを示した。この結果は現在論文にまとめているところである。 2.双曲的3次元多様体のカスプ近傍の構造の記述に用いられた「2次元トーラスの相似構造」による平面折り紙の構成について村井紘子と共同研究を行い、これまでの(n,0)型のもの以外に(p,q)型 (但しqは0ではない)の平面折り紙が存在するかどうかを調べた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Heegaard分解の距離、3次元多様体の絡み目の橋分解の距離に関して、井戸絢子、張娟姫との共同研究により任意の自然数nに対して、距離がちょうどnとなるようなHeegaard分解、3次元多様体の絡み目の橋分解が存在することを示したのは、この分野における一里塚とみなせる結果であり、当初の予想を上回る成果であった。また市原一裕、Yo’av Rieckと共同で与えた一次元球面上の曲面バンドルのファイバーがstrongly acylindricalとなる条件は、これまで、Schleimerなどによって得られている評価を、大きく改良するものであり、当初予想していなかった優れた結果であると評価している。その他小沢誠、高尾和人、張娟姫らと共同でいくらでも橋数の高いunstabilized橋分解をもつ結び目の存在を示すことができたが、これもこの研究によって初めて得られた例であり、この分野の一里塚とみなせる結果である。これも当初の予想を上回る優れた成果であると判断している。 また「2次元トーラスの相似構造」を用いた平面折り紙の構成について村井紘子との共同研究で(p,q)型 (但しqは0ではない)の平面折り紙が存在するかどうかについて考察した。最終的な結果は得られていないが、相似構造のモノドロミーに関するいくつかの新しい事実が観察されており、これからの研究を展開する上で大きな推進力となると評価している。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り「Rubinstein-Scharlemann graphicを利用したHeegaard分解の研究」を進めてゆく予定であるが、特に25年度の研究において曲線複体(curve complex)の研究が三次元多様体論の研究において本質的な役割を果たしていることや、またMasur-Minskyの手法、特に曲線複体のデルタ双極性やsubsurface projection, を用いた研究が活発になりつつある兆しが見えることから、この方向の研究も、井戸絢子、張娟姫と継続することに加えて、特にこの方面で活発に研究を行っている大連理工大学のZou氏等とも一緒に推し進めていきたいと考えている。これに関しては現在、Johnsonによって最近導入された曲線複体内のflexipathと呼ばれる概念について、これが、Heegaard分解内のその距離を実現する曲面との交わりとして実現されている場合には、一意性が成り立つのではないか、という問題を設定しており、まずはこの方向で研究を進めてゆく予定である。 また、相似構造を用いた平面折り紙の構成に関してはこれまで行ってきた「2次元トーラス上の相似構造」の他に、「分岐曲面上の相似構造」を用いてフラクタル折り紙の構成ができるのではないか、という感触を得ており、この定式化を用いた理論の展開をはかってゆきたいと考えている。さらに最近CalvalhoとHallによって定式化された折り紙によるリーマン曲面の構成の理論を適用することも念頭に研究を進めてゆく予定である。
|
Research Products
(3 results)