2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25400099
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
松元 重則 日本大学, 理工学部, 教授 (80060143)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Anosov 流れ / 接触流れ / 軌道同値 |
Research Abstract |
本年度に得られた成果は次の通りである。 (1)閉局面の単位接束上の非特異流れのなす空間 X の部分空間として Anosov 流れのなす空間 A を考える。このとき、A は可算無限個の連結成分を有し、各成分は単連結でないことを示した。 (2)M を3次元有理ホモロジー球面として、a をその体積要素とする。a を保存する Anosov 流れの全体を A(a)で表す。そのうち、接触流れの時間変換となっているものを C(a) と表す。このとき、C(a)は、A(a)の C^1-開集合をなすことを示した。これは、接触Anosov 流れが、予想外に豊富に存在することを示すものである。実は、M が正の Betti 数 b を有する場合でも、C(a)は局所的には、A(a)の余次元 b の空間をなすことが示されるている。 (3)f を S^1 の無限回微分可能同相写像とし、a を Lebesgue 測度とすると、f はLebesgue 測度空間 (S^1,a)上に標準的同値関係を導く。ところで、一般に Lebesgue 測度空間の標準的同値関係は、I 型、II(1) 型、II(infty) 型、およびIII(lambda)型,0<lambda<1、III(0)型、III(1)型に分けられる。我々は。I 型を除き、おのおのの型に対し、それを実現する微分同相写像 f が存在することを示した。これらはすべて、回転数が Liouville 数のものであり、これは、Liouville 世界の豊かさを示す一つの例ということができよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
同分野、異分野の研究者との数多くの知見の交換がきわめて有効であった。ために、いい問題に巡り会うことができた。このため、円周上の微分同相写像の軌道同値型の決定のような成果をあげることができた。具体的には、これは京都大学の泉氏との会話において与えられた問題を考えることにより得られたものである。 また2013年度には、サンチアゴデチリ大学の Andres Navas 氏を日本に招聘したことは有用であった。2次元以上の多様体上の、台がコンパクトな可微分同相写像のなす群は1次元多様体に2回微分可能には作用できないという Kathryn Mann 氏の結果があるが、これを1回微分可能にまで拡張する結果を得た。この契機になったものは、Navas 氏との会話の中で得た Baumslag-Solitar 群の直線への1回微分可能な作用についての結果 であった。 2013年9月には、東京大学数理科学研究科において、研究集会「Geometry of Foliations 2013」が開催された。このために来日した、Sergio Fenley 氏との知見の交換も、研究推進の大いに役に立った。とくに余次元1の葉層構造のうち、ある種の条件を満たすものの上には、連続かつ調和的な関数は定数以外存在しないという結果を導く上で 氏との会話は不可欠であった。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に、いままでの研究推進方法を継続する。数学研究上で、最も重要なことは、よい研究課題を見つけ出すことであると考える。現段階で考えている課題は次のようなものである。コンパクト多様体上に非特異な流れ F が与えられたとき、Fが拡大的であるというのは、「横断方向に」異なる二つの軌道がある定数以上の距離に離れることをいう。これはかなり強い条件であり、拡大的な流れは、明確な力学系的性質を持ち、特に3次元多様体の場合には、擬 Anosov 流れというものに他ならないことを、約20年前に稲葉尚志氏との共同研究において、証明している。ところが、きわめて最近 Alfonso Artigue 氏により「力学拡大的」という概念が提唱された。これは軌道方向も込めて、異なる軌道上の2点が、ある一定の定数以上に離れるというものであり、古典的な「拡大的」という概念に比べ、著しく弱いものである。これについて、円周上の無理数回転の懸垂で、力学拡大的なものがあるだろうかという問題に取り組みたいと考えている。 しかし、総合的に考えると、さらによい問題があるかもしれない。2014年度にはソールにて国際数学者会議が開かれる。是非、この機会を生かし、新しい数学の潮流を感じ取りたいと考えている。また、今後も変わらず、同分野、異分野の数多くの研究者との知見の交換につとめていきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費が当初予定より少なかったためである。 2000円足らずの繰り越しであり、使用計画は、当初の予定と、ほぼ同じである。
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Research Products
(3 results)