2016 Fiscal Year Research-status Report
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25400099
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
松元 重則 日本大学, 理工学部, 名誉教授 (80060143)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 群の不変生成性 / 群の左順序 / 左順序の力学的実現 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.群 G の部分群 H は、G の各元の共役類と交わるとき、[類満」という。G の 類満部分群が G 自身に限られるとき、G は「不変生成」という。 有限群やまた仮想可解群は不変生成である。一方非可換自由群や双曲群はそうではない。本研究では、単位区間上の区分的に線形な向きを保つ同相写像の全体のなす群Pを考え、P およびそのいくつかの部分群が不変生成であることを示した。そのなかには Thompson 群 F も含まれる。これは松田能文氏との共同研究である。群 F とは、各切片の傾きが2の整数乗で、各分点が2進分数であるような区分的に線形な同相写像のなす群のことである。群 F は自由群自由(非可換自由群を部分群として含まない)であることが知られているが、アメナブルか否かはわかっていない。我々の手法で、非アメナブル群で不変生成なものが構成できないかと考えている。一方、F ないしは P の交換子部分群は不変生成でないことが容易に示される。よく知られたことではあるが、この結果は、不変生成という性質が部分群に遺伝しないことを示す例となっている。またほかの Thompson 群 T および V は不変生成ではない。 2.群 G の左順序(左移動不変な全順序)の全体はコンパクト距離付け可能な位相を持つ。その位相において孤立点となるような順序は特に興味深い。群 G 上に左順序が与えられたとき、その「力学系的実現」と呼ばれる G の直線への作用が構成できるのであるが、左順序の孤立性はこの作用の剛性と関連しているのである。我々は孤立左順序の力学的実現の性質を調べ、とくに極小集合を持つことを示した。また、3糸組み糸群 B_3 には Dubrovina-Dubrovin 順序と呼ばれる孤立左順序の存在が知られていたが、それとは異なる孤立左順序を B_3 上に構成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の当初の目的は群作用と葉層構造の研究であった。研究業績欄に述べた本年度の業績1と2は、群の1次元多様体への作用に関連したものであり、ともに興味深いものと考えられる。とくに区間のPL同相群の不変生成性の証明は、汎用性の高いものであり、今後、同様の結果が他の同相群についても得られる可能性を秘めている。また、群の左不変順序に関する研究は、基本的なものであり、今後の様々な研究において有用であろうと考える。
葉層構造の研究については、本年度は、特筆すべき結果を出すには至らなかったが、M. Martinez 氏、及び A. Verjovsky 氏との共同研究を継続中である。
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Strategy for Future Research Activity |
群の不変生成性についての研究を継続したい。とくに非アメナブル群で不変生成なものを見つけたいと考えている。また、葉層構造については、コンパクト多様体上で葉が双曲的な葉層の葉に沿った単位接束上の PSL(2,R) 作用の研究を行いたい。これは昨年度ある程度の結果を M. Martinez 氏、A. Verkovsky 氏との共同研究で得ているが、それを発展させたいと考えている。 そのために必要な文献入手については、日本大学理工学部数学教室の図書室のおかげで問題がない。各種の研究集会への出席、講演、専門家との知見の交換を積極的に行いたい。
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Causes of Carryover |
出張予定があったため、次年度からの前倒し支払い10万円を受けたが、出張に支障が出たために取りやめた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記前払い支払いを追加した次年度使用額は当初予定の直接経費とほぼ一致しており、 例年と同様の使用を計画している。具体的には、80パーセント以上を国内、国外の旅費に充てるつもりである。これにより、国内外の専門を一にする研究者との交流を円滑に行うことができ、本研究に必要な最先端の知識を得ることができよう。これは研究活動には欠かせないものと考えている。また、出版されたあるいは出版前の論文を読むことも欠かせないが、これについては日本大学理工学部数学科の図書室の利用の恩恵を受けている。さらには、アーカイブからのダウンロードも可能であり、研究費からの支出はごく少額になるだろうと考えている。
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Research Products
(7 results)