2013 Fiscal Year Research-status Report
自明結び目のアーク表示をほどくために必要な基本変形の回数の上界
Project/Area Number |
25400100
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
林 忠一郎 日本女子大学, 理学部, 教授 (20281321)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 自明結び目 / arc表示 / exchange変形 / merge変形 / R変形 / rectangular diagram / 交差点数 |
Research Abstract |
自明結び目のarc表示はarcの数を変えないexchange変形と減らすmerge変形のみでarc2本まで変形できることをDynnikovが示した.これは結び目が自明であるか否かの判定アルゴリズムを与える.しかし,何回の変形が必要か,大雑把な評価しかなく,このアルゴリズムが実用的であるか否か明確でない.arcがn本のとき,mergeするまでに最大何回のexchangeが必要かnの式で上から良い評価を与えるのが第1の目標である.それを用いて,自明結び目の平面上のdiagramをR変形を用いて交差点無しに変形するのに最大何回の変形が必要か交差点数cの式で上から良い評価を与えることが第2の目標である.2013 年度は立教大学の安藤龍郎氏の協力を得て,予定の研究の順番を変更して,第2の目標の研究を先に行った.arc表示は平面上のrectangular diagramとほぼ同じものであり,それを用いて,HenrichとKauffmanはR変形の回数を評価した.構想としては優れているが,彼らの研究には複数の疑問点があった.rectangular diagramに対するexchange変形やmerge変形が何回のR変形で実現できるかという問題は,rectangular diagram の一番上と一番下の辺の操作を考えていなかったが,それを2012年度修了の学生,西川友紀との共同研究で評価した.2013年度は安藤氏とその評価の改良を行い,論文を専門雑誌に投稿中である.また,平面のambient isotopyによって,diagramをrectangularに直す研究も行った.交差点数cに対してrectangular diagramの辺の数を少なく済ませる.ほぼ最善の結果を得て,論文を執筆中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
立教大学の学生だった安藤龍郎氏の協力を得られたので,順序を変更して,3年目に行う予定だった2つの研究を1年目に行った.3年目に行う予定だった研究は全て遂行できたので,順調に研究が進展していると評価して良いと思われる.2つの研究のうち,1つは既に論文を専門雑誌に投稿中であり,もう1つは論文を執筆中であるが,7割がたは書き終えた. 2つの研究のうちの1つ目は,rectangular diagramの一番上と一番下の辺におけるexchange変形とmerge変形が何回のR変形で実現できるか上から評価することであるが,辺の本数をnとしてnの2次式で評価することができた.証明はしていないが,1次式で評価することは不可能で,ある具体例は2次式の回数が必要であると確信している. 2つ目は,交差点がc個のknot diagamは辺が何本以下のrectangular diagramに平面上のambient isotopyによって変形できるか上から評価することであるが,cの1次式で評価することができた. いずれもほぼ最善に近い評価が得られたと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
3年目に予定していた研究を1年目に行ったので,2・3年目は1・2年目に予定していた研究を遂行する. 自明結び目のarc表示をmergeするまでに必要なexchangeの最小回数の上界を求めれば,ほどくまでに必要なmergeとexchangeの合計回数の上界が得られる.HenrichとKauffmanはこれらの上界を大雑把に評価したが,もっと精密に評価したい.結び目のarc表示はarc列と頂点列の2つのサイクリックな数列の組で表される.それぞれ空間内の配置に沿って付けたarcの番号と頂点の番号を結び目に沿った順に並べたものである.arc列(頂点列)において続き番号(iとi+1(mod n))が並んでいるとき,merge操作でarcの本数を減らせる.また,i番のarc(頂点)とi+1番のarc(頂点)をexchangeすると,arc列(頂点列)の番号iと番号 i+1の位置が入れ替わるが,頂点列(arc列)は変化しない.一般に1からnの番号をサイクリックに並べた数列を考える.続き番号が並ばない数列全ての集合Wを考え,続き番号の位置を入れ替える操作有限回で移り合う2つの数列は同値であるとする.数列たちの集合Wは幾つかの同値類に分かれる.この同値類をコンピューターを用いて詳しく観察するのが2014年度の課題である.まずは,同値類の数,同値類の元の個数,同値類の直径を計算する.同値類の直径とは,その同値類の2つの元を繋ぐ「続き番号の位置を入れ替える操作」の最小回数の,2つの元のあらゆる組み合わせを考えたときの最大値である.さらに詳細に同値類の中身の構造を調べる.2015年度は2014年度に得たデータに基づいて,マージできるようになるまでのエクスチェンジの最小回数の上界を求める.同値類の元の個数の最大値を用いればすぐに大雑把な評価が得られるが,直径を利用できるように考えたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
夏季休暇中に沖縄で行われた結び目の研究集会に参加して研究発表する予定であったが、研究集会の日に仕事が入って参加できなくなってしまった。2013年度は教育実習という科目の担当であったので、2年次の学生を連れて、中学校の授業参観に赴く大切な仕事が入った。それが不運にも研究集会の日程とぶつかった。 自明結び目のアーク表示に関するコンピューターによる計算を進めてきた結果、予定よりもさらに計算が速いコンピュータが必要であるという認識に至った。プログラムを工夫して計算を速くすることは勿論行ってきたし、これからも改良する。オペレーションシステムとプログラム言語も速く動作するものに変更する予定である。しかし、それでも十分かどうか難しいところである。通常の市販されているような仕様のコンピューターではなく、研究目的用にカスタマイズした仕様のものをメーカー に注文して、予算の許す限り最速のコンピューターを用いたいと考える。次年度使用額はそれに使うことを計画している。
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Research Products
(2 results)