2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25400102
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岩崎 克則 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00176538)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 超幾何級数 / ガンマ乗積表示 / 漸近展開 / パンルヴェ方程式 / 周期解 / ハミルトン系 |
Research Abstract |
(1)ガウス超幾何級数 F(a,b,c;x)に対してf(w)=F(pw+a,qw+b,cw;x)とおく.我々の課題はf(w)がガンマ乗積表示を許すようなパラメータ(p,q,r;a,b;x)を特徴付けることである.ガウス超幾何級数という最も古典的な超幾何級数に対しても,この問題は完全な解決からは程遠い.本研究を始めるに当たって,初年度は種々の基盤整備を行った.先ずオイラー積分表示へ鞍点法を適用することによりf(w)の漸近展開を得た.またf(w)の極の分布に関する算術的な性質を確立した.その応用としてf(w)が高々有限個の極しか持たない場合(初等的な場合)のガンマ乗積表示を或るパラメータの範囲で全て決定した. (2)次の内容の論文2篇が出版された.パンルヴェ第VI方程式の解空間の中で,非初等的な閉曲線に沿う非線型モノドロミー写像で不変な既約コンパクト部分集合は,孤立周期解か超幾何関数解のなすリッカチ曲線かのいずれかに限る.また,周期解のなす曲線,すなわち周期曲線はリッカチ曲線に限る.孤立周期解の個数は周期と共に指数的に増大する.あるクラスの代数関数解は,リーマン・ヒルベルト対応を通じて指標多様体上の力学系の有限軌道の観点から特徴づけられる. (3)各パンルヴェ方程式の相空間は,葉層構造の特異点解消の観点から,ヒルゼブルフ曲面のブローアップの反復により構成された(1970年代). その後,第II型から第VI型までのパンルヴェ方程式については,相空間のシンプレクティック・アトラスの構成,及びその上の多項式ハミルトン構造が確立された.逆にこれらの幾何構造がパンルヴェ方程式を一意的に特徴づけることが示された(1990年代). しかし,これらは第I方程式については未解決であった.そこでハミルトン構造の代わりに軌道体ハミルトン構造を考えることにより,この問題を解決した (岡田脩と共同).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ガウス超幾何級数のガンマ乗積表示の研究で,パラメータの動く範囲をある範囲に限った上であるが,漸近挙動の確立や,極の分布の算術的性質について,研究目標に向けての基盤整備が十分に出来た.また,そのパラメータの範囲内で,初等的な解の決定が完全に出来た.次に,以前から研究していたパンルヴェ第VI方程式の非線形モノドロミーに関する論文,及びある種の代数関数解に関する論文が2篇出版された(1篇は上原崇人と共著).最後に,岡田修との共同研究により,パンルヴェ第I方程式の軌道体ハミルトン構造に関する理解がかなり進展し,ある未解決問題を解決することができた.これらは研究がおおむね順調に進んでいることを示している.
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Strategy for Future Research Activity |
ガウス超幾何級数のガンマ乗積表示の研究では,既に得ている漸近挙動の結果や,極の分布の算術的性質に加えて,留数の漸近挙動,(sin x)(sin y) = c (定数) なる超越平面曲線の算術的性質などを研究する.これらを総動員し,更に無理数の有理近似に関する定理をなど適用して,ガンマ乗積表示が存在するための必要条件を導出する.得られたところまでの結果を論文にまとめる予定である.パンルヴェ方程式に関する研究では,パンルヴェ第I方程式の軌道体ハミルトン構造に関する成果を,研究集会「第5回ハミルトン系とその周辺」で発表する予定である.また,この結果とパンルヴェ第I方程式に対するパンルヴェ性の証明との関係を考察する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定より出張期間が短くなったため当該助成金が生じた. 旅費として使用する.
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