2014 Fiscal Year Research-status Report
広義拡散過程列近似に基づく双一般化拡散過程の諸相の解明
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25400139
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
富崎 松代 奈良女子大学, 名誉教授 (50093977)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嶽村 智子 奈良女子大学, 自然科学系, 助教 (40598140)
飯塚 勝 九州歯科大学, 歯学部, 准教授 (20202830)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 広義拡散過程 / 双一般化拡散過程 / 極限定理 / モランモデル / 強マルコフ性 / 正値連続加法的汎関数 / 斜積 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続いて、広義拡散過程列の収束と極限過程の状態について考察した。 Takemura, Tomisaki and Iizuka(2014)では、集団遺伝学のモランモデルに対して、拡散過程列の極限過程が広義拡散過程ではない事例について、Ogura(1989) による双一般化拡散過程の理論に基づいて標本路の具体的な表現を得た。その表現から、極限過程は強マルコフ性を満たさないと予想していた。しかし、標本路の表現に現れる正値連続加法的汎関数(本事例の場合、ブラウン運動の局所時間と境界への到達時刻の合成として得られる汎関数)の分布の評価を行うことにより、極限過程が強マルコフ性を満たすことを証明し、研究論文として発表した。 広義拡散過程は正値連続加法的汎関数を用いてブラウン運動の時間変更と尺度の変更により得られる。さらに、正値連続加法的汎関数の列と尺度の列を考察することにより、双一般化拡散過程が得られる。時間変更は正値連続加法的汎関数の逆写像により定義される。この観点から、正値連続加法的汎関数を定義する拡散過程の局所時間の逆写像に関する研究を平成25年度から開始した。平成26年度は、尺度と速度測度関数の漸近挙動が局所時間の逆写像に及ぼす影響(漸近関係)について考察した。この漸近関係は、元の拡散過程の調和変換過程に対しても保存されることも示し、これらの結果を研究論文としてまとめた。また、広義拡散過程の特性量を多次元確率過程との関係の中でとらえるために、正値連続加法的汎関数に基づく球面上のブラウン運動との斜積として表現される多次元確率過程の研究を平成25年度に開始した。平成26年度は、斜積確率過程について、そのグリーン関数と基本解の具体的な表現を与え、その表現を用いて、広義拡散過程の尺度と速度測度関数の状態区間の端点での挙動が、斜積のグリーン関数の摂動と基本解の空間的一様性に反映される状況を考察し、その結果を研究論文としてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要は、平成26年度の研究計画として記載した内容がおおむね順調に進展していることを示している。 集団遺伝学のモランモデルに対して、拡散過程列の極限過程が広義拡散過程ではない事例について考察を行った。広義拡散過程は、ブラウン運動の時刻変更と尺度変換により表現できる。双一般化拡散過程は広義拡散過程列の極限として自然に出現する。この二つの事実を組み合わせると、モランモデルの極限過程として得られる双一般化拡散過程について、その標本関数の表現が得られる。これは、Ogura(1989) によって提示された双一般化拡散過程の標本路の表現と一致する。これにより、双一般化拡散過程である極限過程の強マルコフ性が証明できた。また、この表現を用いると、標本路の挙動を調べることができ、正値連続加法的汎関数(ブラウン運動の局所時間と境界への到達時刻の合成として得られる汎関数)の分布が、標本路の挙動が特異であるか否かを判定する指標として有効であることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた成果に基づいて、以下の研究計画を推進する。 集団遺伝学のモランモデルの極限過程として得られる確率過程は、広義拡散過程と双一般化拡散過程である。双一般化拡散過程であっても強マルコフ性を有することを証明したので、この性質を用いて、次の点を明確にする。① 標本路の挙動が特異ではない点において、広義拡散過程に対して用いた手法を適用し、状態空間の分類を行う。そして、分類点と尺度関数や速度測度関数の挙動との関係を調べる。更に、標本路の挙動が特異ではない点の集合の位相構造を解明する。② 標本路の挙動が特異な点の集合を対象として、状態空間の分類を行う。ここで、広義拡散過程と異なる概念(右通過点、左通過点、罠、正則点)を明確にする。 正値連続加法的汎関数を定義する拡散過程の局所時間の逆写像に関する研究も引き続いて実施する。これまでの研究では、尺度が状態区間の一つの端点で発散するという条件を課していたが、この条件を外した場合について考察する。
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Causes of Carryover |
2014年8月に関西大学で開催したシンポジウム「International conference on Stochastic Processes, Analysis and Mathematical Physics」には、本研究課題に関連した分野で研究成果を得ている研究者が参加した。これらの研究者と、シンポジウムの期間中に、時間を見つけて本研究課題に関して研究打合せを行い、これらの研究者に、滞在費と専門知識の提供に対して謝金を支払った。これらの研究者の滞在が当初の予定よりも短くなったために、支払金額が当初予定の金額より少額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年8月から9月にかけて、関西大学、東北大学、京都大学で開催される複数の国際シンポジウムに参加し、参加者とこれまでに得られた研究成果について研究討論を行う予定である。シンポジウムの参加のための出張旅費として使用する。
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Research Products
(9 results)
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[Book] Festschrift Masatoshi Fukushima (Editors Zhen-Qing Chen, Niels Jacob, Masayoshi Takeda, Toshihiro Uemura), Interdisciplinary Mathematical Sciences Vol.172015
Author(s)
Sergio Albeverio, Martin Barlow, Krzysztof Burdzy, Nicolas Bouleau, Louis H Y Chen, Mu-Fa Chen, Xin Chen, Shizan Fang, Patrick J Fitzsimmons, Hans Follmer, Wolfhard Hansen, Masanori Hino, Hiroshi Kaneko, Witold Karwowski, Daehong Kim, Kazuhiro Kuwae, Panki Kim, Shinichi Kotani, Matsuyo Tomisaki 他
Total Pages
607(577-605)
Publisher
World Scientific