2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25400143
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
飯塚 勝 九州歯科大学, 歯学部, 准教授 (20202830)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 確率過程 / 集団遺伝学 / 確率モデル / モラン・モデル |
Research Abstract |
「自然淘汰の相互作用を伴う多次元確率モデルの研究」の一環として、互助的相互作用による分子進化の機構を記述する集団遺伝学における複雑な確率モデル(間接的な相互作用を伴う互助的中立突然変異モデル)に関して以下の解析を行った。このモデルは本来、15次元の複雑なマルコフ連鎖、もしくは、拡散過程として記述されるが、変数の個数が多いためにその解析が困難である。そのため、2013年9月にミュンヘン大学を訪問した際の Wolfgang Stephan 教授との研究討論を踏まえて、この複雑な15次元確率過程をより解析が容易な7次元マルコフ連鎖、もしくは、拡散過程で近似することを立案した。この方針にしたがって、まず、間接的な相互作用を伴う互助的中立突然変異モデルを7次元マルコフ連鎖として定式化した。次いで、このマルコフ連鎖のある境界点への初期達時間の性質を、確率解析とコンピュータ・シミュレーションを併用して考察した。その結果、この確率過程を定義するパラメータの組に関して、多くの場合、間接的な相互作用の存在が初期到達時間の平均を、間接的な相互作用が存在しない場合に比して短くすることが判明した。この結果は、Wolfgang Stephan 教授のグループによる分子進化に関するデータ解析結果と整合性を持つことを示している。 「集団遺伝学におけるランダムな媒体中の確率過程の研究」に関しては、ランダムな環境下でのモラン・モデルを定式化し、極限定理を証明するための準備的研究を行った。また、このモデルに関連して、モラン・モデルが適切な時間スケーリングと弱突然変異の下で、連続時間飛躍型マルコフ過程に有限次元分布の意味では収束するが、この収束は確率過程を定義する関数空間の測度の弱収束には拡張できないことを証明し、その結果を学術論文として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究実績の概要は、当該年度の研究計画として記載した内容がおおむね順調に進展していることを示している。 「自然淘汰の相互作用を伴う多次元確率モデルの研究」については、間接的な相互作用を伴う互助的中立突然変異モデルに関して、ある境界点への初期到達時間に関する考察を行い、多くの場合、間接的な相互作用の存在がある境界点への初期到達時間の平均を短縮することを明らかにした。 「集団遺伝学におけるランダムな媒体中の確率過程の研究」については、関連する課題として、モラン・モデルの弱突然変異における極限過程への収束が、有限分布の収束の意味では成立するが、確率測度の列の弱収束の意味では成立しないことを広義拡散過程や双一般化拡散過程の知見を用いて証明した。さらに、ランダムな環境におけるモラン・モデルの定式化を行い、このモデルの極限定理を証明するための準備的な考察を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
「自然淘汰の相互作用を伴う多次元確率モデルの研究」については、上述の境界点以外の幾つかの点、もしくは、これらの点の集合への初期到達時間とその時点での確率過程の状態に着目して、この7次元マルコフ連鎖の見本路を幾つかのタイプに分類する。この結果とこれまでにすでに得られている結果をミュンヘン大学の Wolfgang Stephan 教授と討論し、それを踏まえて共同で学術論文を作成する。さらに、関連する分子進化現象を記述する確率モデルを定式化し、その基本的性質の解明を目指す。 「集団遺伝学におけるランダムな媒体中の確率過程の研究」については、ランダムな環境におけるモラン・モデル(2状態マルコフ連鎖を駆動確率過程とする出生死滅過程)の拡散近似を広義拡散過程の知見と、持続型確率的自然淘汰モデルの拡散近似の手法を用いて考察する。
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