2015 Fiscal Year Research-status Report
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25400156
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
長澤 壯之 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (70202223)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 一般化された超曲面 / メビウス・エネルギー / 分解定理 / メビウス不変性 / 変分公式 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般化された超曲面の大域存在に関しては、平成26年度に掲載受理されたもの(タイプIとII)が、27年度に印刷された。すべての場合(タイプI-V)に対しても肯定的に解決できるという論文を投稿中であったが、27年度中に掲載受理の通知があった。 平成26年度に引き続き、曲線に関する共形不変なエネルギーの一つであるメビウス・エネルギーについて研究した。共計不変性を持つ事は、エネルギー最小化列がエネルギーの集中を起こし、コンパクト性を失う。すなわち、最小化列法が適用できない。メビウス・エネルギーもそのような例であるが、共計不変性だけでなくメビウス不変性を有しているため、素結び目のクラスでは、メビウス変換を施すことでエネルギーの集中を避ける事ができる。合成結び目のクラスではこの操作は破綻する。 平成26年度は、メビウス・エネルギーをメビウス不変な3つのエネルギーに分解可能である事を示し、それを利用して第一変分公式・第二変分公式を低階項まで含めて陽に計算し、様々な関数空間における評価を得た。この結果は平成26年度中に受理され、27年度に出版された。 上に述べた分解エネルギーの変分公式は、曲線の変形という視点から結び目(曲線)と試験関数が同じ関数空間に属するとして計算された。求められた変分公式は、少なくとも形式的な部分積分により、試験関数の正則性を緩めることが出来る。実際には、変分公式の対角部分の特異性が部分積分に影響を与えない事を示す必要がある。結果として、分解エネルギーの第一変分公式は、結び目(曲線)が3階の二乗可積分型ソボレフ空間に属していれば、二乗可積分空間上の線形形式として拡張できる事が示された(投稿中)。 分解されたメビウス・エネルギーの、結び目上に中心をもつ球面に関する反転に対する不変性は未解決であったが、これを肯定的に解決した。論文として投稿し、受理・掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共計不変なエネルギーに対する変分問題は、エネルギー集中現象の解析がカギとなる。メビウス・エネルギーは、そのメビウス不変性を最小化列に取り込むことで、素結び目に対しては最小化法が機能した(フリードマン・へ・ワン)。この方法は、合成結び目に対しては機能しない。 本研究では、最小化列法の連続版である勾配流を用いる。エネルギーの集中が起きれば、勾配流はその時刻で爆発を起こすはずである。エネルギーの集中がいつ起こすかを知るには、エネルギーの詳細な構造解析が必要となる。 これまでの研究で、エネルギーをメビウス不変性を保ちつつ3つの形に分解することで、構造を低階項まで含めて詳細に調べることが出来た。3つ目のエネルギーは絶対定数であり、変分問題としては無視してよい。第一エネルギーと第二エネルギーは、見た目は大きくことなるが、構造が類似していることが徐々に明らかになった。変分公式の評価にもこの類似性を利用した。この結果は、Math.Sci.Netのレヴューにおいて“In conclusion, the paper is well written and definitely contains hard work and significant results.”と高く評価された。第一変分に関しては、その定義域が二乗可積分空間まで拡張する事が分かった。従って、その空間において勾配流を考察する事になる。 平成27年度中に出版された論文は1編であるが、その他に1篇が受理、もう1篇が投稿中である。これらは国内外の研究集会などで6回の講演を行った。 以上のことから、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
「合成結び目のクラスには、メビウス・エネルギーの最小元は存在しない。」と考えられている。これはカズナー・サリバン予想と呼ばれるもので、未解決の問題である。予想が正しければ、合成結び目を初期曲線とする勾配流は何等かの特異挙動を起こすはずである。予想される結果は、有限時刻でプルタイトを起こし、その点にエネルギーが集中する。 粗い計算で、長さを制約条件に持つ勾配流では、それに沿ってウィルモア・エネルギー(曲率の2乗積分)が有界に留まる限り、勾配流が爆発する事はないと考えている。これが事実がどうかを確かめたい。メビウス・エネルギーは共計不変であるので、特に相似変換でも不変である。従って、長さを制約条件に加える事は問題を矮小化するものではない。また、その勾配流に沿ってウィルモア・エネルギーの時間発展を解析する予定でいる。ザルツブルク大学のジーモン・ブラットと共同で研究を推進する予定でいる。
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Research Products
(8 results)