2013 Fiscal Year Research-status Report
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25400159
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中西 賢次 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40322200)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 非線形波動方程式 / 大域ダイナミクス / 散乱理論 / 基底状態 / 爆発解 / 水面波 |
Research Abstract |
エネルギー臨界冪の非線形波動方程式の大域ダイナミクスを解析した。以前の研究で、基底状態よりエネルギーが少し上までの解は、最大存在時刻付近で基底状態近傍に留まるか、時刻大で自由解へ漸近(散乱)するか、基底状態から離れて爆発する事が分かっていた。本年度は、最初の解集合がエネルギー空間で超曲面を形成する事を示し、それらは(3次元球対称なら)基底状態集合へ散乱または有限時間爆縮の意味で漸近する事を示した。基底状態への散乱と爆縮は、従来別々に存在証明されていたが、これらを統一的に扱う事でエネルギー空間で滑らかな超曲面を得た所が重要な新しい視点である。さらに、その超曲面を任意のエネルギーレベルまで拡張する事にも成功した。 Zakharov と Klein-Gordon-Zakharov 方程式系の大域ダイナミクスを解析した。以前の研究で、基底状態よりエネルギーが低い Zakharov 方程式の球対称解は散乱と時間非有界に2分される事が分かっていたが、Klein-Gordon-Zakharov では散乱と有限時間爆発へ2分される事を示した。また、Zakharov の小さな解について球対称性条件を緩め、角方向1階微分までエネルギー空間に属する初期状態に対し散乱の結果を得た。これはStrichartz 評価の改良版を球対称解から拡張した事による。 水面波の方程式に対して多重周波数での非線形 Schrodinger 方程式近似を調べた。非線形 Schrodinger 方程式が広汎な非線形波動に対して単一周波に近い解の長時間近似を与える事は良く知られているが、複数の周波数を考える事で、非線形共鳴の大域挙動への影響を調べるのが目的である。表面張力と重力と有限水深が有る場合、分散関係式の凹凸により非自明な共鳴が生じるが、その影響で極限方程式に時間・空間積分を含む非線形項や初期境界層が現れる事を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エネルギー臨界の非線形波動方程式という限定的な設定ながら、大域的ダイナミクス解析の高エネルギーへの部分的拡張に成功し、またダイナミクスの境界となる超曲面が基底状態への散乱と爆縮の和集合である事を示したのは、更に大域的なダイナミクスの解明に向けて重要な進展である。また、Zakharov 方程式の球対称性の仮定を緩めた事は、技術的な進歩ではあるが、広汎な方程式へ理論を拡張するために重要な一歩と言える。水面波に関する結果は別の方向性ながら、一つの方程式から様々なダイナミクスが生じるメカニズムを調べるための布石と期待される。以上は十分な成果であるが、他方、高エネルギーレベルで相空間の様相が、基底状態近傍より複雑になる事の解明については、期待以上に進んでいない。これらを勘案すれば、おおむね順調と言うのが妥当な所である。
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Strategy for Future Research Activity |
最重要課題は高エネルギーでの大域ダイナミクスの解明であり、変分法と力学系の視点を更に取り入れる事で本質的な進展を図りたい。基底状態エネルギーを超えるに当たっては、相空間における位相で言うと連結性のみが問題となったが、励起状態まで到達するには高次の位相不変量が鍵を握る事が予想される。他方、方程式と現象の拡張に関しては様々な課題があるが、質量臨界冪以下への拡張、KdV など分散関係が異なる方程式への拡張、安定な基底状態がある場合への拡張を、特に重要な課題として考える。これまでの研究成果では基底状態が不安定な事が本質的に効いているが、安定な場合は第1励起状態がそれに代わる事が期待され、高エネルギーの解析とも関連している。またこれまでの手法の拡張に拘らず、非線形波動の様々な非自明大域挙動についても解明していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初は特に授業休業期間中に、国内外の研究集会への参加旅費などで更に支出する予定であったが、海外からの招聘(旅費先方負担)を受けてそれらを優先したため、この科研費を想定したほど使う暇が無かった。 昨年度と同様に研究集会への参加や研究連絡のための旅費として大半を使用するが、専門書の購入などにも充てる予定である。
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Research Products
(8 results)