2014 Fiscal Year Research-status Report
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25400159
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中西 賢次 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40322200)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 非線形分散型方程式 / ソリトン / 散乱理論 / 解の爆発 / 中心安定多様体 / 基底状態 / 励起状態 / 国際研究者交流:フランス |
Outline of Annual Research Achievements |
非線形分散型方程式の大域ダイナミクスの重要課題の一つは、様々なソリトンを含む解の分類である。その為に、安定・不安定なソリトンを両方持つモデルケースとしてポテンシャル付き非線形 Schrodinger 方程式の大域挙動を考察した。詳しくは、解の総質量が小さく球対称という制約下、基底状態はポテンシャルの物に相似して負の小さなエネルギーを持ち、第1励起状態はポテンシャルの無い場合に相似して正の大きなエネルギーを持つが、私は励起状態より低いエネルギーの解全てを、有限時間爆発と基底状態への散乱に分類した。その区別は初期値に対する具体的汎関数で与えられ、ポテンシャルが無い場合に類似するが、後者では安定ソリトンが無く、不安定な基底状態のみが解析対象となるのが重大な違いである。実際証明においても、安定な基底状態が存在する状況でエネルギーの大きな剰余部分の大域分散性を導出する部分が最も重要な部分となる。 もう2つの重要課題は、Schrodinger 型以外の分散性と、低い冪への拡張である。特に後者については基底状態の安定性によって結果自体が変わるので、まずは境となる質量臨界冪が問題となる。そこで質量臨界冪の一般化 KdV 方程式の大域挙動をソリトンの周りで調べた。この問題では既に Martel, Merle, Raphael がソリトンのエネルギー近傍でソリトン進行方向で減衰する初期値に対し、ソリトンの集約爆発か、時間大域解でソリトンへ漸近するか、ソリトンのエネルギー近傍から脱出する事を示していた。私は彼らの研究に合流して上記3つの挙動の関係を調べ、ソリトンへの漸近解集合が余次元1の多様体で残り2つ境となる事を示した。超臨界冪との大きな違いは時間正負の挙動が線形化作用素では区別できず、中心安定・不安定の2多様体がソリトンに沿って接する所で、これらの多様体がどのように交わるかは今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究では、非線形分散型方程式の大域ダイナミクスの解明に向けて、次の重要な3つのステップで成果を挙げる事ができた: ①基底状態の次のエネルギーレベルである励起状態エネルギーへ到達 ②Schrodinger 型以外の分散性への拡張 ③低い冪への拡張に向けて質量臨界冪へ到達 これらは証明中の技術的発見も含めて今後の発展が大いに期待できるもので、順調な進展と言えるであろう。しかし革新的なアイデアや驚異的な発見をした訳ではなく、挑戦すべき課題の巨大さに比べて計画以上とは言えない。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果から自然に続く課題として、ポテンシャル付の場合については、励起状態エネルギーを超えた解の大域挙動解析、また質量や球対称性の制約を除外する問題がある。質量臨界の場合については、時間負から正への大域挙動の分類、特に遷移解の有無と安定性、空間減衰と大域挙動の関係の解明、中心安定多様体のエネルギー空間への拡張、ソリトン近傍以外の解の挙動分類などがある。これらは個別の問題としても興味深いが、非線形分散型方程式全般において大域ダイナミクスを理解するための重要な足がかりになる事が期待される。またスペースの都合で成果欄に記していないが、これらとは別に、4次元の Zakharov 方程式や1次元の非線形 Schrodinger 方程式などで、小さな解での非線形共鳴と大域挙動の関係を調べている。これらの解析を解の大きい場合へ拡張する方向も試みたい。
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Causes of Carryover |
海外出張旅費を予定していたが、訪問先から支給の申し出が有ったため、計画よりも支出が減った。年度末に近かったのでその分を他に使用する時間が十分無かった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
カナダ、アメリカ、オーストラリアに研究訪問及び国際研究集会への参加を予定している。また機器の老朽化と研究室移転に伴い、ノートPC・ディスプレイ・プリンターの新調を予定している。
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Research Products
(7 results)