2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25400163
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
赤木 剛朗 神戸大学, システム情報学研究科, 准教授 (60360202)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 非線形解析 / 発展方程式 / 異常拡散 / 非線形拡散 / 変分法 |
Outline of Annual Research Achievements |
科学技術や社会現象に関する様々な研究分野に於いて,古典的な拡散理論から逸脱するような拡散現象が知られている.本研究課題ではそのような異常拡散を記述する発展方程式に対する理論解析(適切性,正則性,解の定性的性質,解の漸近挙動等の解析)を行い,各方程式・モデルの特徴を明らかにし,またそのために必要な手法の確立を目的としている.具体的な研究課題として,(i) プラズマの特異拡散を記述する Fast Diffusion 方程式の消滅解の漸近形状に対する安定性解析,(ii) 変動指数を含む非線形拡散方程式の解析,(iii) 非整数階微分や分数冪ラプラシアンを含む拡散方程式の解析 を扱う.(i) では解の漸近形に対する安定性解析の枠組みの構築にはじまり,ある対称性を有する領域に於ける漸近形の対称性とその安定性に関する考察(例えば,球対称な領域で球対称な漸近形状が必ずしも安定にならない事例など)を行った.また既存の研究では対象となる漸近形が関数空間上で孤立していない限り,安定性/不安定性の決定が困難であったが,そのような孤立性が成り立たないケースに対して,漸近形の安定性/不安定性を決定した.ここで開発された手法を用いると,半線形楕円型方程式の解の対称性の破れに対して発展方程式論の立場から別証明を与えることができる.(ii) では,変動指数を含む二重非線形発展方程式を取り上げ,その解析に必要な枠組みの構築を行った.ここでは極大単調作用素や劣微分作用素に関する理論を,変動指数を含む問題の解析に適した形に改良し,解の存在定理を変動指数の特徴を活かした形で得ている.(iii)では分数冪ラプラシアンを含む Cahn-Hilliard 方程式や非整数階微分を含む波動型方程式を扱い,適切性やある種の特異極限など幾つかの問題に関して結果が出始めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究計画で挙っていた「孤立していない最小エネルギー解の安定性の証明」は,同年度中には解決しなかったが,平成26年度中盤に大きな進捗があり,問題は解決している.その他,一般次元に於ける円管領域上の球対称な漸近形の不安定性の証明も,この進展の副産物として得られており,この課題に関しては当初予定されていた計画をすべて完了している.また,平成25年度にすでに先んじて成果がえられていたもの(変動指数の入った二重非線形発展方程式など)もあり,平成26年までに挙っていた計画はすべて完了している.また分数冪ラプラシアンを含む Cahn-Hilliard 方程式など,平成27年度に予定されていた研究課題についても成果が出始めており,その他の課題についても予備研究が進んでいる.よって研究計画全般に渡って,当初の計画以上に進展していると言えよう.
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Strategy for Future Research Activity |
(1) Fast Diffusion 方程式の解の漸近形の安定性解析:当初予定されていた課題は全て解決したため,追加課題として,Sobolev の臨界冪のケースの解析を行う.このケースでは,これまで扱ってきたケース(Sobolev の劣臨界冪)と同様には解の漸近形が定まらないため,安定性解析の枠組みの修正からスタートする必要がある.またコンパクト性の破れに関しては,楕円型方程式の変分解析によって開発されてきた手法の蓄積があるため,それらを転用する. (2) 変動指数を含む二重非線形発展方程式:当初予定されていた課題は全て解決したため,追加課題としてより一般化されたケースに対応できる発展方程式論の提案を目指す.特に,変動指数を含む空間の一般化である Musielak-Orlicz 空間やさらに一般化されたモジュラー空間にフィットした, 極大単調作用素,劣微分作用素の理論を構築する.これらの試みは単に発展方程式の一般論の枠組みを広げるだけではなく,作用素論などの基盤理論を補強するものであり,同問題に限らず関連する分野への応用も期待できる. (3) 非整数階微分作用素や分数冪ラプラシアンを含む発展方程式:分数冪ラプラシアンを含む Cahn-Hilliard 方程式の適切性,ある特異極限問題に関する成果のとりまとめを行う.また解の長時間挙動を明らかにする.さらに非整数階微分作用素を含む波動型方程式の解の表現公式について研究を行う.
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Research Products
(10 results)