2013 Fiscal Year Research-status Report
ある特異性を持つ波動伝播のグリーン関数の漸近挙動とその散乱理論への応用
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25400173
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
門脇 光輝 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (70300548)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中澤 秀夫 日本医科大学, 医学部, 教授 (80383371)
渡邊 一雄 学習院大学, 理学部, 助教 (90260851)
渡邊 道之 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (90374181)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 音響波 / 弾性波 / 屈折波 / グリーン関数 / レゾルベント / 定常位相の方法 |
Research Abstract |
研究代表者である門脇は、研究分担者である渡辺道之との協議に基づいて、3次元におけるニ層媒質中の音響波動伝播および半無限媒質中(半空間)の弾性波動伝播を記述する方程式に対するGreen関数・レゾルベントの空間遠方での漸近形(主部・球面波+誤差項)を得るに至る手立てを新たに考案した。少し詳しく述べると、ここでの波動伝播に対する一般化された固有関数(以下、固有関数と記す)は、ある特異性を持つ。とりわけ、その偏導関数は臨界角と呼ばれる入射方向において発散する。これは屈折波または屈折波的反射波の存在を起因とする。Green関数は、一般化された固有関数を被積分関数として、その入射方向とスペクトルに関する積分で記述される(Poisson型積分として表記される)。またレゾルベントは、Green関数を積分核とする積分作用素として記述される。Green関数・レゾルベントの空間遠方での漸近形を導く際に、入射方向に関する積分に対して部分積分法、特に定常位相の方法が用いられる。しかし、部分積分(したがって固有関数を微分すること)を2回以上行うと、固有関数の可積分性が臨界角と呼ばれる方向の近傍で損なわれる。結果として、臨界角近傍での部分積分は1回に限定される。従来の方法で漸近形を得るためには通常2回の部分積分が必要となる(対象次元が3次元のため)。これに対してCopson(1965)、Leiws(1967)などのアイデアを盛り込んで臨界角近傍では1回の部分積分で漸近形を導く手立てを新たに考案した。 また、研究分担者である中澤は、課題に関連する結果として、2次元以上の外部領域におけるシュレディンガー方程式と消散項付き波動方程式に関するレゾルベント評価のスペクトル関する一様評価を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先にも述べたように、3次元におけるニ層媒質中の音響波動伝播および半無限媒質中(半空間)の弾性波動伝播を記述する方程式に対するGreen関数・レゾルベントの空間遠方での漸近形を得るに至る手立てを考案した。Green関数・レゾルベントの空間遠方での漸近形を得ることは、これらの波動伝播に対して研究目的(散乱体を設定して、その散乱振幅を漸近形から導出する)を達成する上で、大きな前進を意味する。しかし、現時点では、Green関数・レゾルベントの空間遠方での漸近形の導出計算途中である(それゆえに、散乱振幅を導出には至っていない)。また、漸近形の導出計算過程から、散乱体にある程度の滑らかさを仮定する必要に迫られたことも遅れの理由である。一方、三層媒質中の音響波動伝播に対しては、まだ未着手である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、ニ層媒質中の音響波動伝播に対するGreen関数・レゾルベントの空間遠方での漸近形を得ることを第一の目標とする。そして、この結果と摂動されたニ層媒質中の音響波動伝播に対する散乱理論(漸近完全性など)を合わせ用いて散乱振幅の導出を行う。その際、散乱体の滑らかさに関する仮定がない形(有界性のみの仮定)での導出を目指す。なお、摂動されたニ層媒質中の音響波動伝播に対する散乱理論(漸近完全性など)については、研究代表による結果を含めて多くの研究結果があり、適宜それらを用いる(必要ならば適宜修正等を行う)。ニ層媒質中の音響波動伝播に対して研究目的が達成された後は、摂動された半無限媒質中(半空間)の弾性波動伝播、ついで摂動された三層媒質中の音響波動伝播に対して研究目的の達成を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の進度がやや遅れていることから、グリーン関数に対する数値計算を行うための数学的準備が整わなかった。そのため、数値計算用として購入を計画していたパソコンおよび計算ソフトの購入を見送ったため。 研究目的が達成できた波動伝播に対して、その数学的結果を踏まえた数値計算を行う。そのために、パソコンおよび計算ソフトを購入する。さらに、成果発表用も兼ねた小型ノートパソコンも購入する。この他、数学および物理・工学に関する書籍も購入する。以上を物品費として充てる。また、旅費として、3人の研究分担者との研究打ち合わせ、成果発表および情報収集のための研究会参加に充てる。謝金として数値計算補助および資料作成に、その他として研究会会場使用費に充てる。
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Research Products
(9 results)