2014 Fiscal Year Research-status Report
非線形分散型方程式に現れるパターンの安定性解析,特に平面孤立波の研究
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25400174
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
水町 徹 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 准教授 (60315827)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | line soliton / KP-II方程式 / 安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
空間異方性のない関数空間におけるKP-II方程式のline soliton解の安定性を研究した.KP-II方程式は空間1次元の長波長近似モデルであるKdV方程式に波の進行方向と垂直な横方向の空間変数を加えた方程式であり,1 line soliton解はKdV方程式の1 soliton解を横方向に一様に拡張した解である.KdV方程式の1-soliton解の重み付空間における漸近安定性はPego-Weinstein('94)により知られており,KdV1-soliton解のKP-II方程式の解としてのtransverse stabilityは一昨年度に私自身により証明されている.その研究においてはPego-WeinsteinのKdV方程式の論文と同様にline solitonの進行方向に指数的に増大する重み関数を用いて証明したため,得られた結果ではline solitonの前方に加える摂動に強い制約があった.’00年頃にMartel, Merle氏らはKdV方程式の変分構造を利用してKdV 1-solitonのエネルギー空間における漸近安定性を証明しているが,KP-II方程式のエネルギー汎関数は解の時間大域的な挙動を調べる上で役に立たないため,彼らの方法を用いて重み関数の制約を解消することは難しい.今年度の研究では長波長近似モデルの特性を利用して,解を変調するline soliton, 伝播速度の遅いKP-II方程式の微小解とみなせる部分, さらにその残りの部分に分けるて解析することで,「KP-II方程式の解の3乗可積分空間におけるノルムが時間大域的に小さなままであるような初期データ」をline soliton解に摂動として加えた場合には安定であることが証明できた.今後は括弧内の性質が成り立つような初期値のクラスを調べることが課題になる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数のline solitonが交差する多ソリトン解の安定性が最も興味深い問題であるが,その前段階としてKdV方程式の多ソリトン解のKP-II方程式の解としての横断的安定性の研究を開始した.以前のFermi-Pasta-Ulam方程式の研究では,多ソリトン解の安定性を証明する際に,解を伝播速度の異なる部分に分解して議論する必要があった.長波長近似モデルという共通の特性を持つKP-II方程式も同様であると考えられ,今年度の研究はその雛形として重要である.
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Strategy for Future Research Activity |
まずline soliton解の空間等方的な関数空間における安定性が実際にどのような関数空間で証明できるのか,非線形散乱の方法を用いて研究を進める.この部分に関しては必要に応じて国外の研究者と共同研究を行う予定である.さらにKdV方程式の多ソリトン解がKP-II方程式の解と見た場合にも非線形安定であることを証明する.
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Causes of Carryover |
年度の途中で翌年度に広島大学に異動することが決まった.翌年度分は他の年度より金額の配分が少なく,新環境で研究に必要なノートパソコンを購入する必要やセミナーの講演者に対する旅費の補助が増える可能性を考慮し,本年度の支出は出来る限り抑制した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
九州大学から貸与されていたノートパソコンを返却したため代わりのノートパソコンを購入することに使用する.
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Research Products
(3 results)