2015 Fiscal Year Research-status Report
非線形分散型方程式に現れるパターンの安定性解析,特に平面孤立波の研究
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25400174
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
水町 徹 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60315827)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | KP-II 方程式 / 平面進行波解 |
Outline of Annual Research Achievements |
KP-II方程式は浅い水面波の運動を記述する空間1次元のKdV方程式を空間2次元に拡張したモデルであり,KdV方程式のソリトン解の横断安定性を説明するモデルとして知られている.一昨年度の研究ではKdV方程式の1-ソリトン解を横方向に一様に拡張した線ソリトンは,波の進行方向に指数減衰する摂動に対して安定になることを証明したが,本年度は多項式オーダーの重み付き空間に属する摂動などより広いクラス摂動に対して線ソリトンが横断安定であることを示した. KP-II方程式は長波長近似モデルの一つであり,線ソリトン解に摂動を加えた後十分に時間が経つと,解は線ソリトンの部分とそのずっと後方でKP-II方程式の微小解のように振る舞う部分に分離すると考えられる.後者の部分を粗っぽく「初期時刻において線ソリトン解に加えた摂動を初期値」とするKP-II方程式の微小解で表わすことにすると,残りの摂動部分は指数的な重み付き空間に属する.そのため,この部分は一昨年度の結果と同様に指数的な重み付き空間における線ソリトンの線形安定性の結果を使って評価することができた. 横方向の幅が有限の場合と異なり, KP-II方程式の線ソリトンの尾根に沿って摂動が伝播する様子は,常微分方程式系ではなく,線ソリトンの局所的な進行速度と傾きを未知関数とするBurgers方程式系で記述される.本年度の研究では2乗可積分な初期値に対して,このBurgers方程式系の解が時間大域的に単調性公式をみたすことを証明できたため,線ソリトンに加える摂動の鉛直方向の減衰条件は2乗可積分であれば十分なことが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
線ソリトンに対する摂動を伝播速度の違う部分を分けて取り扱うことで 従来用よりも広いクラスの摂動に対して線ソリトンの横断安定性を証明できた.
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Strategy for Future Research Activity |
KP-II方程式の場合に得られた線ソリトンの横断安定性の結果は,他の2次元長波長近似モデルの平面孤立波に対しても成り立つと予想される.Boussinesq modelなどの完全可積分系でない2次元長波長近似モデルの平面進行波解の横断安定性を証明する.
また本年度の研究結果を発展させ,KdV方程式の多ソリトン解のKP-II方程式の解としての横断安定性を証明する.
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Causes of Carryover |
1月までに当該年度の科研費をほぼ使い切ってしまう見込みであったため,年度末に研究に関する情報収集を円滑に行うため,20万円を前倒し請求した.年度末には,複数の研究集会の日程が重なり,当初予定したよりも研究集会に参加できる機会が少なかったため,前倒し請求した分に余りが生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
広島大学の数理解析セミナーに若手講演者を招待するためなどに使う.
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Remarks |
本年度に得た研究成果をプレプリントとして公開した.プレプリントはProceedings of the Royal Society of Edinburgh, Section: A Mathematicsに掲載されることが決まった.
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Research Products
(11 results)